研究課題/領域番号 |
20K19032
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研究機関 | 宮崎県立看護大学 |
研究代表者 |
藏元 恵里子 宮崎県立看護大学, 看護学部, 講師 (30765839)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 看護ケア / 顔面表出 / 観察技術 / 筋電図 / 画像解析 / 表情 |
研究実績の概要 |
表情の変化は、表情を表出するものと、視覚的に認識する者との間で成立する非言語的コミュニケーション手段となる。ナイチンゲールは、看護師の基本は、患者が何を感じているかを患者に大変な思いをして言わせることなく、患者の表情に表れるあらゆる変化から読み取ることであると述べている。看護ケアは、看護の知識や経験のみならず、看護師個人の直感や思考が反映されたものであり、患者に心地よい、安楽、爽快感などの精神活動の変化が生じる。患者の表情形成は、看護師にとって、ケアに対する直接的評価となるだけでなく、病気からの回復過程のアセスメントや看護介入の一助となり、長期的な療養生活を支える重要な指標として機能する。 本研究の目的は、看護ケアに伴う、心地良い、安楽などの精神活動のもたらす表情形成プロセスについて混合研究を用いて分析し、患者理解を深めると共に、よりよいケアの創出につながるようエビデンスに基づいた新たな表情観察法の提案に向け、検討することである。 看護ケアに伴う心地良い、安楽などの表情の変化について、生理学的手法により測定し、客観化した状態で特徴の抽出と、その変化過程の可視化を試みる。次に、質的研究として、看護師の患者の表情を読み解く現象について看護の実践知から深層構造を明確にする。これらの研究を統合し、看護ケアと表情形成プロセスのつながりを見出し、エビデンスに基づいた新たな表情観察法を提案するものである。 研究期間の前半は、看護ケアにより生じる顔面電位トポグラムを作成し、ケア時の感情を反映するアンケートや心理尺度などの主観的指標との突合せを行い、看護ケアに伴う表情形成の特性やその過程について検討することを目的として活動している。令和2年度は、看護ケア(温罨法・足浴など)の選定を行いながら生理学的測定が可能となる環境を整備し、パイロットスタディを計画していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、測定環境の整備および看護ケアの選定、パイロットスタディの実施を行う予定であった。 実際には、以前より使用していた改良後の電極を使用し、顔面への電極配置や貼付方法について、再度検討を行った。また、心地良い、安楽などの表情の変化をもたらす看護ケアについて、文献等をふまえて調査した後、共同研究者を交えて、意見交換を行った上で、ケアの種類や方法を選定した。ケアに伴う生理学的変化を測定することが可能となるよう実験環境等についても検討した。同時に、ケア時の感情を反映するアンケートや心理尺度などの主観的指標においても検討を行った。 なお、今年度においては、COVID-19感染拡大の影響による行動制限などが生じたために、生体電位計測システムなどの新たな機材の購入には至らず、実験環境を全て整えることはできなかった。 パイロットスタディの実施については、感染状況を見極めながら、感染対策を講じて実施する必要があった。これらは、次年度へ向けての課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ケア時の表情の変化を捉えることができるよう、生理学的測定が可能な環境を整える必要がある。その際、看護ケアの特徴や、ケアの効果が測定できるような指標を取り入れていく。対面によるケアの実施が安全に行えるよう、COVID-19感染対策も同時に講じていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、COVID-19感染拡大の影響による行動自粛などがあり、学会発表・参加などの研究活動を一部制限する必要が生じ、また、生体電位計測システムなどの新たな機材の購入に至らなかったため、未使用額が生じた。
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