成人女性・高齢女性に対する後頸部温罨法が入眠を誘導させるかどうかを検証した。既存研究は、手掌表面皮膚温の上昇と主観的睡眠感が高まるといった結果であり、脳波のような明確に入眠をとらえられる指標を用いていないため、入眠を誘導したかは明らかになっていない。そこで、後頸部温罨法は温罨法実施時に、簡易に実施できることから、臨床で汎用しやすい入眠援助技術として用いることができると考え、入眠が誘導されるときの指標として自律神経活動、手掌表面皮膚温、脳波、主観的眠気を測定した。当初の予定では、多床室環境下での実験予定であったが、感染症の拡大により、高齢女性4名同時の実験は実施困難であった。そのため、成人女性1名ずつの実験へと変更し、感染症が落ち着きをみせた頃より高齢女性1名ずつの実験を行った。研究対象者は健康な成人女性12名と高齢女性12名であった。測定手順は被験者1名に対して、後頸部温罨法を実施する日 (温罨法日)と実施しない日(非罨法日)の計2回の実験を行った。測定時間は合計40分間とした。その結果、自律神経活動および手掌表面皮膚温においては温罨法日と非罨法日間では有意差は認められなかったが、脳波においては温罨法日のθ帯域のパワー値の方が非罨法日のθ帯域のパワー値より増加し、温罨法日のα帯域のパワー値は非罨法日のα帯域のパワー値より減弱していた。入眠誘導時の反応とした自律神経活動や皮膚温の明らかな変化については、本研究では明らかにすることができなかったが、入眠の段階をとらえることができるエビデンス高い脳波の反応があったことは、後頸部温罨法が入眠誘導をもたらす看護技術である可能性があると考える。看護技術として確立していくために、引き続き入眠誘導の作用機序の解明が必要である。また感染症拡大の影響により被験者数や性別が十分とは言えないため、一般化できるよう検討する必要があると考える。
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