研究実績の概要 |
本研究の目的は,補完代替療法であるアロマテラピーによる疼痛緩和の有用性を検証することにある。がん性疼痛の中でも,神経性障害性疼痛は患者のQOLを低下させ,さらに従来の薬物療法も効果が限定的であることから,治療にアロマテラピーを含む補完療法を導入する価値がある。そこで,その有用性を検討するために,令和2年度は以下の項目で,主に次の介入研究に向けた準備を行ってきた。 【Enriched Environment(以下,EE)の概念分析】 看護学において重要な概念と考え,Rogers&Knaflら(2000)の概念分析法を用いて属性,先行要件,帰結を分析し,概念を定義した。EEとは「脳の可塑的変化による健康の促進を目的に,対象に合わせた多感覚刺激を,複数の要素を連携させたケアとして早期的且つ継続的に患者の環境に介入して環境を整えること。その環境に患者との信頼関係は,欠かせない。患者が主体的に選択して実施することにより循環して対象の生活が活性化される環境。」と定義づけられた。この概念は神経障害性疼痛の患者を対象としたケアにおいても重要であり,今後のアロマテラピー介入に取り入れていく。 【アロマテラピーに関する文献レビュー】 文献レビューを行った結果,現在の看護学におけるアロマテラピー介入の意義があること,脳神経系分野の研究が増加,そしてメカニズムが解析してはいない部分が臨床での手段や方法が分断され,看護ケアとしては確立されていないと感じた。今後,メカニズム解明の機序の一助ともなりえる測定用具を探索して疼痛評価をしていく。 【レモングラスの栽培】研究に用いる質の高い安全な精油を入手するために,東海大学熊本キャンパスの協力のもと,レモングラスを栽培した。新鮮重での収量は1 回当たり1 kg/㎡前後で、乾物換算では約 200g/㎡,精油は1.2 ml,芳香蒸留水は350mLを得られる量であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回のCOVID-19感染拡大により,海外著書・資材の受け取り遅延や,研究協力施設が感染者対応施設を兼ねていた為,施設への入室が困難になる等の問題が発生した。 このことからも現時点ではCOVID-19が終息に向かうまで施設を訪問することができないため計画に遅れが生じた。 しかし,アロマテラピーの文献レビューや概念分析など訪室が無くても可能な研究を行ってきた。今後はCOVID-19感染の状況を十分に把握し施設と連絡を取りながら研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
神経障害性疼痛患者のアロマテラピーによる疼痛緩和やQOL向上に関する文献を収集し,systematic reviewとメタ解析を行う。 そして,レモングラス精油やその主成分であるCitralの投与によって得られる疼痛緩和について,そのメカニズムを解明する。 また,看護ケアとしてのアロマテラピープログラムの試案・測定用具の探索をして内容が適切か準実験として数名の患者を対象にした疼痛緩和の試験検証を行う。 今後も,COVID-19感染の状況を十分に把握し,施設と連絡を取りながら研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回のCOVID-19感染拡大により,海外著書・資材の受け取り遅延や,研究協力施設が感染者対応施設を兼ねていた為,施設へ入室が困難な状況になっていたことなどから,研究の実施が遅れている。 COVID-19感染拡大予防のため,病院内での実施が困難であるが,今後はCOVID-19感染の状況を十分に把握し可能な方法を検討しながら施設と連絡を取りながら研究を進めていく。
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