研究実績の概要 |
本研究の目的は,補完代替療法(CAM)であるアロマテラピーによる疼痛緩和の有用性を検証することにある。研究を進めていく中で,疼痛対象をがん性疼痛ではなく慢性疼痛において変更する必要性を感じ,その有用性を検討するために,慢性疼痛を抱えるパーキンソン病(以下PD)の慢性疼痛を対象において研究を行った。慢性疼痛は患者のQOLを低下させ,従来の薬物療法も効果が限定的であることから包括的な看護が必要である。米国での先行研究では,40%のPDにて,少なくとも1つのCAMが使用され,残存する疼痛に対して英国や米国で多く使用されているのはアロマテラピーとマッサージであった。嗅球と直接連絡のある大脳辺縁系への入力が減弱するPDにアロマテラピーが行われることは,大脳辺縁系の機能を活性化させ,下降性疼痛抑制系への期待がある。 本年度は,アロマテラピーが慢性疼痛の中でも特に重症度の高い神経障害性疼痛を軽減やQOL向上に対しての影響についてsystematic review(以下,SR)とメタ解析を実施した。アウトカムや測定方法に関する知見を得ることができた。その成果は国際学会に申請し,発表した。 このSRで得た知見と,新型コロナウィルス感染防止策を考慮し,PDに対するアロママッサージによる慢性疼痛とQOLを測定できる適切な評価指標を検討するために研究計画書において倫理審査で承認を得ることができた。 そして,東海大学熊本キャンパスの協力のもと,栽培二年目であるレモングラス精油を,ガスクロマトグラフィー質量法の分析結果,鎮静作用があり,フローラル調の含有率が多く,香りに敏感な日本人に受け入れやすい香りで,皮膚刺激が少ないことを示し,患者に安全で質の高い精油であることを示した。これまでの研究における知見は国祭・国内の招待講演もあり,発表した。また,出版した書籍の中でも一部述べた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は介入研究であり,新型コロナウィルス感染のリスクから研究対象者の安全をできる限り確保し,対象者の理解が得られるよう,研究開始を延期し,感染予防策を研究計画に追加・修正した。 また,文献検討をして研究対象者に修正を加えたことが,進捗の遅れの原因でもあった。しかし,吟味したことで研究の意義とその必要性はより高まったと考えられる。 2022年度は,研究協力施設において対象者に介入の上,データ収集が実施できる見込みである。今後は患者の状況を十分に把握した上で,施設と連絡を取りながら研究を進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は感染防止策を徹底し,6月より施設において事例研究で一例ずつ確認し,質的にも分析していく。 同時に,痛みそのものについても,客観的な評価として定量的感覚検査,血液検査,脳波で疼痛の軽減を量的にも分析していく。 その後,準実験として,アロママッサージが慢性疼痛患者のQOL向上に関与し,疼痛緩和の包括的な看護ケアとしていえるのか検証していく。 また,昨年実施した概念分析や本年度実施したsystematic reviewとメタ解析については論文投稿を行う。
|