研究課題
生涯変化せずかつ血縁者にも影響を与える個人の遺伝情報を扱う遺伝学的検査(生殖細胞系列の遺伝子検査)は、その実施に際して遺伝カウンセリングが必須であり、そのneedsは急増している。しかし、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーの数は少なくかつ都市部に偏在しており、遺伝医療の格差が存在する。こうした遺伝医学・遺伝看護学におけるunmet needsを解決するために、ビデオカンファレンスシステムを用いた遠隔遺伝カウンセリング(Tele-Genetic Counseling: TGC)に着目する。TGCは、欧米においては一定の成績を挙げているが、本邦では全く普及していない。本研究は、本邦初のTGCに関する臨床研究であり、アンケート調査の2群(遠隔群vs対照群)比較により、TGCの安全性、有効性、留意すべきポイント、法的に遵守すべきことなど、実地的な観点から知見を獲得する。本研究を通じ、TGCを社会実装していくためのエビデンスを構築することを目指す。令和3年度は、令和2年度に引き続き、作成したアンケート調査票を「遠隔遺伝カウンセリング」群(以下、遠隔群)と「対面遺伝カウンセリング」群(以下、対照群)に割り付け、遺伝カウンセリング終了後に調査票を直接配布した。令和2年度は、遠隔群15例、対照群28例に調査票を配布し、それぞれ8例、25例から返答を回収した。引き続き、本研究を通じてTGCのエビデンスを蓄積し、我が国の遺伝医学・遺伝看護学のunmet needsを解決するための一助としたい。
3: やや遅れている
研究立案時には想定していなかった新型コロナウイルスの感染流行に伴い、遠隔医療が想定より早く着目されるようになった。遠隔遺伝カウンセリングについても一定の成果が得られているが、遺伝カウンセリング来談数が想定より少なかった。
令和4年度は、引き続き遠隔群および対照群で質問票配布および回収に努める。遠隔群と対照群とで回答スコアを統計学的に比較検討し、TGCの有効性、問題点、利用者満足度を明らかにする。また自由記載欄から、利用者の具体的な意見やニーズを収集する。本研究の成果を関連学会等にフィードバックし、医学的・医学経済的・看護学的・心理社会的観点など、多角的な観点からTGCの質の評価を行う。
新型コロナウイルス感染症流行拡大に伴い、遺伝カウンセリング来談数が想定より少なかった。また学術集会が全てWeb開催となり、旅費が不要となっ た。次年度は登録患者数を増やし、調査票回答スコアの統計学的解析を行い、TGCの有効性、問題点、利用者満足度を明らかにする。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
Human Genome Variation
巻: 9 ページ: -
10.1038/s41439-021-00180-8
International Journal of Pediatric Otorhinolaryngology
巻: 152 ページ: 110975~110975
10.1016/j.ijporl.2021.110975
巻: 8 ページ: -
10.1038/s41439-021-00178-2