研究課題
遺伝学的検査(生殖細胞系列の遺伝子検査)は、保険適応の拡大に伴い、近年急速に実施件数が増加している。遺伝学的検査は生涯変化せずかつ血縁者にも影響を与える個人の遺伝情報を扱うため、その実施に際しては遺伝カウンセリングが必須であり、そのneedsは急増している。しかし、遺伝専門職である臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーの数は少なく、かつ都市部に偏在しており、遺伝医療の格差が存在する。こうした遺伝医学・遺伝看護学におけるunmet needsを解決するために、ビデオカンファレンスシステムを用いた遠隔遺伝カウンセリング(Tele-Genetic Counseling: TGC)に着目する。TGCは、欧米においては一定の成績を挙げているが、本邦では未だ普及していない。本研究は、本邦初のTGCに関する臨床研究であり、アンケート調査の2群(遠隔群vs対照群)比較により、TGCの安全性、有効性、留意すべきポイント、法的に遵守すべきことなど、実地的な観点から知見を獲得する。本研究を通じ、TGCを社会実装していくためのエビデンスを構築することを目指す。令和5年度は、令和2-4年度に引き続き、作成したアンケート調査票を「遠隔遺伝カウンセリング」群(以下、遠隔群)と「対面遺伝カウンセリング」群(以下、対照群)に割り付け、遺伝カウンセリング終了後に調査票を直接配布した。現在までに遠隔群22名、対面群56名に調査票を配布し、遠隔群14名(64%)、対面群26名(46%)から返答を得た。予定症例数到達まで、引き続き調査票の配布と回収を継続する。
3: やや遅れている
研究立案時には想定していなかった新型コロナウイルスの感染流行に伴い、遠隔医療が想定より早く着目されるようになった。遠隔遺伝カウンセリングについても一定の成果が得られているが、遺伝カウンセリング来談数が想定より少なく、遠隔遺伝カウンセリングの実施も限定的である。
令和6年度も引き続き、遠隔群および対面群で質問票配布および回収に努める。遠隔群と対面群とで回答スコアを統計学的に比較検討し、TGCの有効性、問題点、利用者満足度を明らかにする。また自由記載欄から、利用者の具体的な意見やニーズを収集する。本研究の成果を関連学会等にフィードバックし、多角的な観点からTGCの質の評価を行う。
COVID-19感染症は収束したが、依然として遺伝カウンセリング来談数が想定より少ない状況が続いているため。次年度は登録症例数の目標到達を目指し、調査票回答スコアの統計学的解析を行い、TGCの有効性、問題点、利用者満足度を明らかにする。
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