研究課題/領域番号 |
20K19109
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
桑原 美弥子 聖徳大学, 看護学部, 教授 (00336471)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 学習製無力感 / 身体拘束 |
研究実績の概要 |
本研究は集中治療室で治療を受けた患者が集中治療室退室後に経験しうる心身の不調について、学習性無力感(Learned helplessness)の理論を用いた説明および予防方法の検討を試みるものである。集中治療室への入室を必要とする患者は病態や治療により反復的かつ不定期に不快刺激にさらされる。加えて、人工呼吸に伴う気道管理のため意思疎通が困難であったり、治療デバイスの抜去を予防するための身体拘束を余儀なくされるなどにより、自らが経験している不快刺激を自らの自由により回避することは困難である。この状況は学習性無力感を引き起こすとされる行為と結果の非随伴性(不快刺激の回避行動に対して、回避が成功しない)に該当すると考えられる。 本研究では患者が集中治療室で行為と結果の非随伴性について、①どの程度経験しているのか②どのように認知しているのか③学習性無力感と関連しているのか、の3点を明らかにすることを目的とする。本研究により、①集中治療室退室後の心身の不調の一因および発症プロセスの理解が深まり②不調を生じさせないための予防的な介入を開発する手がかりにつながり得ることが期待される。 これらの目的を達成するため、令和2年度(2020年4月以降)より①集中治療室での参与観察法により、どのような行為と結果の非随伴性をどれくらい、患者が体験しているのかを記述し、②集中治療室入室中および退室後の患者の、行為と結果の非随伴性の認知の様相を、面接によるインタビューにて明らかにする計画であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行が繰り返された2020年から2022年にかけて、集中治療室をフィールドとした研究活動の受け入れ施設確保は困難で、現時点までデータ収集を開始できていない状況にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究開始年度であった令和2年度(2020年度)は新型コロナウイルス感染症の国内発生と蔓延への警戒から、史上初めての緊急事態宣言が発令され、日常行動はおろか、研究活動についても厳しい制限が課された。集中治療室では新型コロナウイルス感染症に罹患した患者への治療に多くの時間と人手を割くこととなり、また感染管理のためレッドゾーンに立ち入る医療従事者を限定する人員配置により、参与観察をデータ収集方法とする研究依頼を受け入れていただけるような状況ではなかった。さらには新型コロナウイルス感染症に対応した個人防護具の不足が深刻で、医療従事者に最優先で配分する切実な状況から、研究者が集中治療室に入室する準備を整えることも困難であった。 感染状況がいったん落ち着いている時期がおとずれても、厳重な感染管理のために集中治療室に研究者が入室できない状況が続いた。令和4年度にはデータ収集方法を変更し、医療従事者に患者の観察記録の作成を依頼する計画を立てたが、新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けての人員不足や、反復する流行の波により、実現しなかった。現時点でデータ収集を開始できていない状況であり、研究の進捗状況は遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年5月8日より新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが変更となり、ポストコロナ社会が本格的に動き出している現状をふまえ、あらためてデータ収集の許可を得られる病院を開拓する。研究フィールドを確保できたら、感染管理に十分に留意しながら研究計画立案時の予定通り集中治療室で参与観察法により、行為と結果の非随伴性を観察し、記述する。予定の研究期間が短いため、当初の予定よりも研究フィールドを増やし、研究補助者も活用してデータ収集を進める。集中治療室退室後の患者へのインタビューについては、新型コロナウイルス感染症の国内発生以降、活用がすすんだオンライン会議システムを用いておこなうオプションをとりいれることにより、研究協力者の確保に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行が繰り返されたことの影響を受け、データ収集を開始できなかったため、関連する助成金を活用する機会が無かった。研究の進捗が遅れていることを受け、データ収集の対象施設を増やしたこと、研究補助者を活用することなどにより当初予定していたデータ収集を、期間を短縮して進めていくため、助成金の使用計画に変更は無い。
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