研究課題/領域番号 |
20K19110
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
阿部 美香 順天堂大学, 医療看護学部, 助教 (90708992)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | せん妄 / ICU / 看護 / 安心 / 患者の経験 / ポリヴェーガル理論 / 現象学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、せん妄を発症した患者の体験を基に患者の精神内界に適した精神看護の技法を適用し、せん妄状態に陥っている患者の恐怖や孤独感といった苦悩を緩和して安心を与えるために効果的な精神看護プログラムを策定することである。令和3年度の目標は、前年度にポリヴェーガル理論を基盤に考案した看護プログラムをICUに導入して、介入研究により探索的に効果を確認することであった。 令和3年度は、すでに倫理審査の承認を得ていた3施設でCOVID-19感染対策のため介入研究の開始を延期したが、そのうちの1施設で実施可能な状況となり、遂行した。 介入研究は、対照群のある中断時系列デザインを採用し、調査開始時点から対照群調査期間とし、対照群の調査終了後に、看護プログラムをICU看護師に教育して実践を始めてもらい介入群調査期間とした。介入ケアを受けた患者がせん妄から回復後に、せん妄状態だった時の経験をインタビューし、現象学的手法を用いて患者が認識したがままを分析した。また、介入ケアを実践した看護師にも実践の評価をインタビューし質的に分析した。結果、介入を受けた患者は、せん妄状態であっても相手が看護師であることを明瞭に認識し、看護師との相互作用の中で安心した経験をしていた。介入を実践した看護師は、患者と自身への気付きを得るとともに、患者の状態については行動が落ち着いたと評価した。この結果は、先行研究で明らかにされていた患者および看護師の経験とは異なるものであり、介入の成果である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19感染蔓延の継続により、倫理審査で承認を得ている3施設のうち1施設での調査しか完了できておらず、症例数が目標に達していない。せん妄の重症度が高い対象への効果の確認がもう少し必要である。また、開始時期を延期したことから、遂行できた施設においてもデータの収集が年末まで、分析が年度末までかかったことにより、学会発表と論文投稿ができていない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きCOVID-19感染蔓延の動向とフィールドの状況を確認しつつ、効果確認のための介入研究を継続して実施し、症例数を増やして結果を確認する。確認後は、その結果を反映させて令和4年度から2カ年計画で効果検証を開始する予定である。せん妄の発生率や重症度は原疾患の違いがバイアスとなることが令和3年度の成果からも明らかとなったため、効果検証の際は、季節性等の疾患の偏りが影響しないデザインの検討が必要である。そのため、効果検証研究の開始時期やフィールドの特徴によっては、研究期間を1年延長する必要性も検討していく。 同時に、これまでの成果を令和4年度内に学会発表と論文投稿していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果を国際学会で発表し論文投稿する予定であったが、介入研究期間を延期したため、年度内の成果発表に至らなかった。そのため、国際学会の参加費と旅費、英訳校正費が未使用となった。また、介入研究が1施設でのみしか実施できておらず、残りの施設分の謝礼と、インタビューデータの逐語録作成業務委託費に残高が生じている。残された課題は次年度に繰り越して引き続き遂行する計画であるため、助成金も繰り越して使用する予定である。ただし、次年度もCOVID-19の状況によっては国際学会発表のために海外渡航することはできない可能性があり、外国旅費は、介入研究の際にフィールドへの持参が必要となっている感染対策物品費に充てる。 次年度の計画は予定通り次年度内に開始するため、次年度分の助成金は、当初の計画通りの使途を予定している。
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