研究課題
時間認知を対象とした神経心理学的分析をレビューした.クリッチレー(1953)は,1)経過時間判断の障害,2)何らかのヒントを用いずに,正確な時間を推測すること(最後に食事した時間を想起したりすること)の障害,3)時間失見当の障害,4)髭剃りやトイレ休憩などの中断によって生じる,日常生活の時間間隔のずれ,5)時間が経つのが早すぎると感じる:周囲が速く動きすぎると感じる現象(時間加速現象)の5種類を紹介した.我々は,時間症候を,①時間計測,②見当識(時間),③年齢認識,④時間の流れの内観,⑤時間順序に分けている.パーキンソン病では,こころで数える1秒が短いことが時間計測検査からも明らかである.アルツハイマー病(AD)では時刻やカレンダーの認知(時間見当識)が障害されている.脳炎例では,過去の記憶が現在を占拠し,自身の年齢認識が障害され,まるで過去にタイムスリップしたかのような作話がみられることがあり,眼窩前頭皮質(特にブロードマンの12野)と海馬の連合性両側性病変が責任部位として重要である.我々の経験した前頭頭頂葉内側(帯状回前部・楔前部・脳梁膨大後域)に病変例では,時間の流れる感覚が障害され社会生活を送るために,時刻表的生活を送っている.アルツハイマー病では楔前部の障害により失見当識がみられることがよく知られ,こころの中の「過去・現在・未来」の時間軸の変容がみられる.前大脳動脈破裂による前脳基底部病変では健忘と共に時間的順序異常が起こることが以前から知られている.また,ADの時間認知の歪みの背景に,単語の文脈的属性(知覚的,空間的,時間的,意味論的,社会的,感情的)の誤認識による時間順序の認知障害によって,ある時点で発生した出来事の特徴を,別の時点で発生した別の出来事に帰属させてしまうことが指摘されている.
3: やや遅れている
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Clinical Neuroscience
巻: 41 ページ: 1094-1098,
精神科
巻: 42 ページ: 389 -395
Frontiers in Aging Neuroscience
巻: 15 ページ: -
10.3389/fnagi.2023.1126618