研究課題/領域番号 |
20K19126
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
キタ 幸子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (70757046)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パートナーからの暴力(IPV) / 児童虐待 / 高齢者虐待 / 家族の多重暴力 |
研究実績の概要 |
1. 実施概要:令和2年度は、家族の多重暴力を簡易的に測ることができるFamily Poly-victimization Scale(Chan et al., 2029)の日本語版(日本語版FPS)の開発、更に、日本には高齢者虐待を測る妥当性・信頼性が確保された尺度が存在しないことから、世界的に高齢者虐待のゴールドスタンダートとして用いられているModified Conflict Tactics Scale(Beach et al., 2005)の日本語版(日本語版MCTS)の開発を同時に目指した。令和2年度は、この2つの尺度の準翻訳、研究チームによる日本語訳の検討、IPV、児童虐待、高齢者虐待の当事者、専門家への認知的インタビューを実施した。 2. 実施計画:1) 令和2年4月に、FPSとMCTSの開発者から日本語版開発の許可を得て、4月~5月に、英語に堪能な研究者2名が英語から日本語に順翻訳を行った。2) 6月~9月にかけて、IPV、児童虐待、高齢者虐待の国内外の研究者7名で構成された研究チームで、FPS、MCTSの日本語訳の検討を行い、日本語版FPS、日本語版MCTSの暫定版を作成した。3) 10月~12月にかけて、認知的インタビューに向けた調査プロトコールの作成と倫理申請、フィールド調整を行った。4) 令和3年1月より、IPV、児童虐待、高齢者虐待の当事者と専門家に対して、日本語版FPS、日本語版MCTSの内容妥当性、表面妥当性を確認・検討することを目的にした個別のインタビュー調査を実施し、3月末で11名のインタビューを終了している(目標例数10名)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の令和2年度の計画では、日本語版FPSを完成させ、妥当性・信頼性を確認しることを目的とした0歳~18歳の子どもを有する成人を対象にした横断観察調査を実施する予定であった。しかし、日本語版FPSの高齢者虐待の項目の妥当性の検討のために、急きょ、日本語版MCTSの開発も同時に行うこととなり、2つの尺度の順翻訳、日本語訳の検討に時間がかかった。更に、認知的インタビューの対象者である子ども家庭支援センター、児童相談所、地域包括支援センターなどの専門家が、新型コロナウィルス感染拡大への対応による多忙が原因で、フィールド調整に時間を有し、当初の予定よりも、認知的インタビューの開始が遅れた。令和3年3月末で認知的インタビューは終了した。そのため、当初の計画よりもやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年末で終了した当事者・専門家11名への認知的インタビューのデータを基に、令和4月~6月で、研究チームで日本語版FPS、日本語版MCTSの内容と表現を再度、検討し、逆翻訳、開発者への確認を経て、6月末には日本語版FPS、日本語版MCTSを完成させる予定である。7月~9月に、日本語版FPS、日本語版MCTSの妥当性・信頼性を確認し、同時に家族の多重暴力の実態と関連要因を明らかにすることを目的とした横断観察研究の調査プロトコールの作成、倫理申請、フィールド調整、ウェブ調査システムの構築を行い、9月には、0歳~18歳の子供を有する成人を対象(目標例数1000名)にした調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、認知的インタビューの対象者である子ども家庭支援センター、児童相談所、地域包括支援センターなどの専門家が、新型コロナウィルス感染拡大への対応による多忙が原因で、フィールド調整に時間を有し、当初の予定よりも、認知的インタビューの開始が遅れ、日本語版FPS、日本語版MCTSの信頼性・妥当性検証のための量的調査が実施できなかった。 令和3年3月度は、7月~9月に日本語版FPS、日本語版MCTSの妥当性・信頼性を確認し、同時に家族の多重暴力の実態と関連要因を明らかにすることを目的とした横断観察研究(目標例数1000名)を実施する予定である。そのため、その調査の実施に伴う、人件費、調査ウェブシステム構築費、対象者への謝礼費、フィールド調整に伴う交通費等に使用する予定である。
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