令和5年度は、A市の住民基本台帳を用いた18歳以下の子どもを有する一般市民2133(有効回答:483)を対象にした横断観察調査のデータを解析し、家族の多重暴力(Family Poly-victimization:FPS)の実態を明らかにした。具体的には、世代間伝達幼少期の被虐待体験と現在のパートナーからの暴力の被害と加害、子ども虐待の加害の関連とその心理的要因、また幼少期の被虐待体験と現在の子ども虐待の加害が及ぼす子どものQOL(Quality of Life)への影響などを明らかにし、現在、論文執筆を行っている。また同データを用いて、暴力の連鎖性と心理的メカニズムへのジェンダーの修飾効果を明らかにし、更に、Edward Chan Ko Ling教授(香港理工大学)が実施した香港・中国の調査結果と併せて、文化・ジェンダーに配慮した家族支援モデルを提案した。その後、こども虐待やパートナーからの暴力の民間支援団体、子ども家庭支援センターや児童相談所、地域包括支援センターにヒアリングを通して、調査結果と導き出した家族支援モデルの有用性、実現可能性、支援現場での応用を検討、普及に努めた。
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