小児の薬物治療における内服薬の重要性は極めて高い。今回、我々が着目したミニタブレットは、口腔内で容易に崩壊せず、原薬の味をマスキング可能な上、発達の段階に応じて投与量調整が可能である。しかし、これまで散剤をミニタブレットに剤形変更した際の薬物動態については検討されていない。将来的にはミニタブレットを小児に適応することを想定しているが、本来得られる薬効が期待できるのか、薬物動態の差がないのか、まずは健康成人を対象にアスピリン散剤とミニタブレットの薬物動態比較試験を行うべく計画を立案した。 最終年度となる今年度は、論文化を目標に研究活動を遂行した。 健康成人を対象にアスピリン100㎎をミニタブレットまたは散剤として投与し、薬物動態パラメータを算出した。サリチル酸の薬物動態パラメータは、Cmax:4.80±0.79mg/L(粉末;P)、5.03±0.97mg/L(ミニタブレット;MT)、AUC0-12:18.0±3.03mg・h/L(P)、18.9±4.59mg・h/L(MT)、アセチルサリチル酸のCmax:0. 50±0.20mg/L(P),0.41±0.24mg/L(MT),AUC0-12:0.71±0.27mg・h/L(P),0.61±0.36mg・h/L(MT)であり,ミニタブレットと粉末製剤の間に有意差は認められなかった。また、薬物投与に起因する有害事象も認められなかった。 成人から得られた薬物動態学的結果をそのまま小児に適用することはできないが、本研究の結果は薬物動態を予測する上で重要である。さらに、アセチルサリチル酸散の服用が困難な小児の服薬アドヒアランスを改善できる製剤であり、小児の薬物療法に貢献するものである。
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