本研究の目的は、慢性疾患患児の父親自身の経験や健常児の父親との比較を通して、父親の心理的特性を明らかにし、その特性に基づいた支援プログラムを開発することである。 研究は3段階構成とし、第1段階では、慢性疾患患児の父親が、どのようなストレスを経験しているのかを明らかにするため、父親7名を対象とし、インタビューガイドを用いた半構造化面接法にて調査を行った。結果、慢性疾患患児の父親のストレス経験として4カテゴリーが抽出され、父親は、子どもが病気であることだけでなく、家庭や社会の中で様々なストレスを経験し、否定的な認知だけでなく、肯定的な認知も併せ持っていることが明らかになった。 第2段階では、健常児の父親との比較を通して、慢性疾患患児の父親の精神健康にストレッサーがどのように関連するか、どのような心理的特性があるのか等を明らかにするため、横断研究デザインに基づき、無記名自記式質問紙調査を行い、慢性疾患患児の父親51名、健常児の父親86名を対象とした。結果、慢性疾患児がいること、子どもの医療処置が多いことは、父親の精神健康の悪さと有意に関連していた。また、高ストレッサー下ではPositive Psychologyの一つであるSense of Coherence (SOC) の高低により父親の精神健康の悪さと有意な差を認めた。さらに、父親のSOCは、ソーシャルサポート全体、下位因子の道具的及び情緒的サポートと有意な正の関連性があることが明らかになった。 第3段階では、支援プログラムの開発に着手するため、ストレス経験に対する慢性疾患患児の父親の認知構造を明らかにすることとした。探索的因子分析の結果、3因子が抽出された。 これらの成果から、父親のストレス経験を肯定的に捉える認知特性に着目し、Positive Psychology Approachに基づく支援の方策が有用である可能性が示唆された。
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