研究課題/領域番号 |
20K19175
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
笠井 久美 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 准教授 (10795339)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 二分脊椎症 / 性行為 / 性教育 / 評価 |
研究実績の概要 |
本研究は二分脊椎症者の性教育のニーズのうち,性行為に関する教育の実践と評価をし,効果的な性教育の発展の一助とすることを目的とした。 高校生~45歳の方を対象に動画で性行為に関連した教育と評価をした。事前調査,動画の視聴,性教育前・直後・1か月後の調査をした。調査内容は,性教育内容の知識に関する12項目,行動変容に関する予期18項目,一般性セルフ・エフィカシー尺度16項目,日本語訳 Rosenberg Self-esteem Scale10項目,性に関する考えや行動の変化1項目,性教育の評価5項目であった。各評価指標の検定力と信頼性,性教育前・直後・1か月後の各評価指標の変化,性に関する考えや行動の変化,性教育の評価を分析した。 男性20名,女性14名のデータを得た。知識合計得点と性の行動変容に関する予期合計得点には,性教育実施前と直後,性教育実施前と1か月後に有意差があったが,GSES標準化得点とRSES-J合計得点には有意差があるとはいえなかった。今回の教育により知識と性の行動変容に関する予期は肯定的に変化したが,個人の全体的な自己効力感を高める影響はなかった。各評価指標に性別の交互作用はみられず,本動画は男女を問わず利用できると考えた。さらに,41.2%が性教育実施1か月後時点で性に前向きな考えを示したが,行動の変化には更なるきっかけが必要と考えられた。性教育の評価は肯定的であったが,さらなる情報提供,方法の工夫,実際的な支援が望まれた。 研究協力者が少なく,一般化は困難であった。より参加や回答しやすい工夫が必要である。また,自作の質問紙も使用したが,より信頼性や妥当性のある尺度の作成を検討する必要がある。教材による教育効果の違いの検証や知的障害のある二分脊椎症者への性教育の検討も課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度のインタビュー調査で成人期の二分脊椎症者から思春期・青年期の二分脊椎症者への性教育の示唆を得る予定であった。しかし、成人期の二分脊椎症者は過去に疾患特有の性教育をほとんど受けたことがなく、複数の性教育ニーズがあることが明らかになった。そのため、当初の計画から対象を変更し、まずは高校生以上の二分脊椎症者を対象に性教育を実施することにした。また、新型コロナウィルス感染症流行により、対面や集団での性教育の実施が現実的ではなくなったため、インターネットを活用した性教育の実施とした。さらに、在住地域により介入群と非介入群を設けて性教育を実施する予定であったが、特定の地域から得られる研究協力者が少ないことや全体的に研究協力者の数が得られにくいことから、介入群と非介入群に分けずに介入前後・1か月後の変化をみていくことにした。
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今後の研究の推進方策 |
二分脊椎症者や幼少期から身体障害のある方への性教育の重要性、必要とされる内容や方法についてさらなる発展につながるように、2022年度に実施した調査の成果を国内外で発表をしていく。また、インタビュー調査により青年期・成人期の二分脊椎症者に複数の性教育ニーズがあることが明らかになったが、今回はそのうちの性行為に関する教育のみの実施となったため、ニーズに対応できるようさらなる性教育の動画の作成をしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
個別での調査ならびにZoomとYouTubeの活用により新たな動画閲覧サイトを作成する必要性がなくなった。また、オンラインでのアンケート項目のカスタマイズとトラブル時の早期介入、柔軟な対応をするため、アンケート作成と管理を業者に依頼せずシステムのみの借用にとどめ、自分で項目の作成と管理をしたため低支出となった。さらに、性教育の実施をオンラインで行ったこと、今年度もオンラインで学会に参加したため旅費が発生しなかった。 今後、専門家の助言を得て二分脊椎症男性向けの性のパンフレットを作成するために予算を使用し、教育媒体による性教育の効果を明らかにする調査につなげていく。
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