研究実績の概要 |
睡眠の不足・過剰と生活習慣病との関連に関する多くの研究が、欧米を中心に実施されてきたが、日本を含む東アジアにおける睡眠分野のデータ集積は乏しい。本邦における睡眠の肥満症への影響を、厳密な疫学解析により解明することを目的に、2012年~2020年の検診受診者5,518人(男性52.3%・女性47.7%、平均年齢57.5±13.1歳)のデータを解析したところ、平均睡眠時間6.4±1.0時間、肥満症の有病率は25.6%であった。年齢・喫煙・飲酒・運動を調整した多変量解析による肥満症のオッズ比(OR)は、男性では、睡眠時間6時間群に比べ、6時間未満群で有意に高く(OR=1.36, 95%Cl: 1.09-1.70)、7時間群と8時間以上群で有意に低い逆線形関係(OR=0.81, 95%Cl: 0.67-0.98, OR=0.72, 95%Cl: 0.56-0.93)であった。一方、女性では、6時間群に比べ、6時間未満群で高く(OR=1.06, 95%Cl: 0.79-1.41)、7時間群で低い傾向を示した(OR=0.83, 95%Cl: 0.64-1.08)。このうち、6年間の追跡が可能であった1,515人(男性51.1%・女性48.9%、平均年齢58.2±11.9歳)を解析すると、11.5%が肥満症を発症した。肥満症発症のハザード比は統計的に有意ではなかったが、男女ともに6時間群に比べ、6時間未満群で高く、7時間群で低い傾向を認めた。以上の結果から、短時間睡眠と男性の肥満症とは有意に関連し、女性も同様の傾向を認めることが明らかとなった。成人の肥満予防対策の一つとして、7時間程度の睡眠時間の確保が望ましいことが示唆された。
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