研究期間全体を通した研究成果として、「認知症高齢者の視点」から、認知症高齢者が日常生活において抱く思いに関する文献検討を行った。文献検討の結果、認知症高齢者は【日々の生活への否定的な思い】や【自己の症状に伴う否定的な思い】を抱きながら日常生活を過ごしていることが考えられ、【安心できる生活の継続への思い】より、今までの生活のペースなどを保ちながら安心して日常生活を過ごしたいことが明らかになった。また、【自己を尊重した関わりへの思い】や【自己に残された力の保持への思い】から、偏見の目で見られるのではなく自己の強みを活かしながら日常生活を過ごしたい思いがあり【他者との関係形成への思い】より、他者と関わりながら日常生活を過ごしたい思いがあることが示唆された。そして、看護職者が日常生活において認知症高齢者の視点から意思を把握するために実践していることに関する文献検討も行った。文献検討の結果、【認知症高齢者へ思いを巡らせ意思を把握する】【家族・他者・本人からの情報をアセスメントし、チームで意思を把握する】【認知症高齢者を生活者として捉えて関わりながら意思を把握する】【認知症高齢者の反応や思いを直接確認しながら意思を把握する】【振り返りを通して認知症高齢者の意思を把握する】とったことを実践していることが明らかになった。 これらの研究結果より、研究目的の1つである認知症高齢者の意思を看護職者がどのように把握しているのかを明らかにすることができたと考える。しかし、もう1つの研究目的である認知症高齢者の視点に基づく意思把握のための指標開発と関連要因については明らかにできなかった。しかし、本研究結果は、認知症高齢者の視点の重視に関係するため、国の認知症施策に寄与できる研究結果になったと考える。
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