本研究の目的は,地域在住高齢女性に対して,視覚フィードバックを用いた予防的骨盤底リハビリテーションを実施し,無作為化単盲検比較試験よって,尿失禁改善及び生活の質の悪化予防効果を明らかにし,尿失禁への予防的リハビリテーションプログラムの基盤を構築することである.2020年度は主に本臨床研究の準備期間として位置づけた.経会陰2次元超音波画像診断装置から得られる画像は,視覚的フィードバックおよびその後の評価項目として用いるため,経会陰2次元超音波画像から描出される,肛門挙筋の一つである恥骨直腸筋に着目することを検討した.先行研究の文献検索などの情報をもとに,経会陰超音波画像の再現性や今回対象とする高齢女性の骨盤底では,形態的な個人差が予想されたことから,先行して撮影した健常女性の経会陰部の2次元超音波画像を詳細に分析し,その他の指標を検索した.画像から得られる情報は,安静時及び骨盤底筋群収縮時の恥骨結合,膀胱頸部,恥骨直腸筋が比較的浅層であり良好な描出が可能である.また,恥骨直腸筋においては安静時から収縮時へ移動する角度の個人差があることが明らかとなった.以上より,安静時及び骨盤底筋群収縮時の恥骨結合,膀胱頸部,恥骨直腸筋,恥骨直腸筋の移動角度を,指標として追加することとした.これは,画面上に描出される骨盤底を対象者自身と検者がリアルタイムで観察される骨盤底の画像を理解するためにも重要であると考えた.2021年度,新たな研究機関へ移り,研究へのエフォートを割くことが叶わず,廃止とした.
|