研究課題/領域番号 |
20K19219
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研究機関 | 弘前医療福祉大学 |
研究代表者 |
鎌田 洋輔 弘前医療福祉大学, 保健学部, 助教 (10828495)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 悪性脳腫瘍 / デルファイ法 / 家族支援 / 情報収集項目の開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、悪性脳腫瘍患者の家族が抱く退院後の生活に対する思いや不安について入院期間中に医療者がアセスメントするために、家族が記入する尺度を開発することである。 1年目(2020年度)には、脳腫瘍患者の家族の思いを質的に分析した7件の先行文献より、悪性脳腫瘍患者の家族をアセスメントするための情報収集項目として、8カテゴリー92設問を作成し、臨床経験3年以上の看護師を対象にデルファイ法を行い、悪性脳腫瘍患者の家族が記入する情報収集項目としての合意を得た。各設問に対し、1を「必要ない」、5を「必要」とした5段階リッカート尺度で回答を求め、4と5を合わせて「必要」とし、回答全体の「必要」を選択した割合を合意率として算出した。すべての設問の合意率の平均値を算出し、第3回調査の合意率の平均値(87.3%)以上だった項目を合意が得られたと判断した。第3回調査に回答した看護師は45名(回収率47.9%)であり、47設問において合意が得られた。 2年目(2021年度)には、1年目に得られた結果を考察し、研究成果としてまとめた。合意が得られた47設問は、悪性脳腫瘍患者の家族が抱く悪性脳腫瘍特有の症状に対する不安を含み、Deekenらが22の家族用尺度を項目別にレビューした結果(2003)と比較検討した結果、他の家族用尺度で評価されているDomainの内容が概ね含まれていることを確認した。また、家族の心理的負担が少なく、看護師のアセスメントから支援につなげやすい設問で合意が得られた。今後は、臨床での適応が可能な尺度化に向けて、看護師視点からの判断だけではなく、家族視点からも設問内容を検討し、合意が得られた設問をどのように活用していくことができるかについても検討していく必要性が示唆された。47設問を構成するカテゴリーを再検討し、尺度の使用時期と時期別の設問内容を検討していく必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は2020年度に実施した質問項目の信頼性検証までの結果を論文としてまとめた。当初の計画では2021年度より有用性の検証を開始する予定であったが、研究成果をまとめる作業に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
1年目(2020年度)、2年目 (2021年度)までの研究成果より、悪性脳腫瘍患者の家族をアセスメントするための尺度の質問項目として、看護師が必要と判断する質問を明らかにした。一方で、家族の心理的負担や入院期間中のニーズの変化も考慮し、全ての設問を同時期に聴取すべきではなく、段階的に活用していく必要性も示唆された。実用化に向け、デルファイ法調査研究によって得られた結果、考察を参考に合意が得られた設問の内容や家族に聴取する順番を十分に検討しながら尺度化を行っていく。 その後、作成した尺度を臨床で使用してもらい、有効性を検証していく。有効性の検証は、COVID-19の感染状況を考慮しながら研究者の居住県内の病院を対象に研究依頼を行い、可能であれば徐々に依頼施設を拡大していく。 課題を遂行する上での課題として、COVID-19の影響により、対象者に対し対面でのデータ収集が難しいことも考えられる。そのため、看護師へはオンラインを活用し、非対面形式での面接調査を実施し、家族に対しては質問紙調査にて本研究の設問に対するリフレクションを行ってもらい、その結果を活用していくなどの非対面形式でのデータ収集の方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、国内の看護師への面接調査、研究成果の発表を予定していたため、調査用の物品や旅費を計上していたが、COVID-19の影響と研究の進捗の遅れにより、県外の移動を伴う研究活動は行うことができなかったことから次年度使用額が生じた。 次年度使用額の使用計画として、COVID-19の流行状況によっては、2021年度に予定していた県外移動を伴う調査を実施し、その費用として使用する。感染状況に関わらず、研究者が居住する県内の病院へは調査を実施する予定であるため、調査物品費、交通費等に使用する予定である。
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