研究実績の概要 |
健常高齢者において,膝関節屈曲角度の低下と膝蓋骨下方可動性減少は関連していることが明らかとなっている.本研究課題では変形性膝関節症(膝OA)患者において,膝関節屈曲角度の低下と関連する膝蓋骨下方可動性減少の制限因子を膝関節周囲の軟部組織柔軟性評価を用いて明らかにすることを目的とした.さらに,介入研究として,膝蓋骨下方可動性を改善させるプログラムを3か月間実施し,膝関節屈曲角度の増大と身体活動量向上をメインアウトカムにした効果検証を実施した. 計測は,整形外科クリニックに外来通院する保存治療中の膝OA患者を対象に,レントゲン写真を用いた整形外科医による重症度分類,膝関節屈曲角度(背臥位と腹臥位),膝蓋骨下方可動性,大腿遠位部の組織柔軟性を膝関節0度と45度でそれぞれ評価した.大腿遠位部の組織柔軟性は, Myoton Pro (Myoton AS, Estonia)を用いて,(1)大腿直筋筋腹,(2) 膝蓋骨基部から近位2 cm,(3) 膝蓋骨基部から近位4cm,(3)のそれぞれ内側と外側2cmの5箇所を計測した.加えて,身体活動量の計測と心理面や生活の質を聴取するアンケートを実施した. 介入効果の検証では,3か月間の介入前後におけるレントゲン写真を用いた整形外科医による重症度分類以外の評価項目について比較し,膝関節屈曲角度の増大,膝関節の疼痛軽減,安静座位時間が減少することが明らかとなった.さらに,膝OAの重症度が,軽症群では,重症群に比較し,改善効果が高いことが明らかとなった.
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