高齢者は多くの慢性疾患を抱え、多剤を服用する。しかし、WHOの報告によると、50%以上の高齢者は薬を正しく服用できていない。高齢者は、服薬アドヒアランスを阻む要因を複数抱えていることが背景にある。しかし、高齢者はそのような状況の中でも何とか薬を正しく飲もうと、日常生活の中で工夫をすることが報告されている。本研究は、地域在住高齢者への服薬支援の在り方を検討するために、彼らの服薬アドヒアランスの実際と実施している服薬管理の工夫を訪問調査により明らかにするものである。 2020年度は、服薬自己管理を行う65歳以上の高齢者55名を対象に、服薬アドヒアランスと服薬管理の工夫に関する調査を行った。コロナウィルス感染症拡大により、訪問調査は対象者55名で一時中断せざるを得なかった。2021年度は、コロナウィルス感染症により、対象者をさらに増やすことができなかった。本研究は、当初量的分析により服薬アドヒアランスに影響する服薬管理の工夫を明らかにすることを予定していたが、状況より質的データ(服薬管理の工夫)を中心に分析を進めるよう、方向性を切り替えた。55名の対象者より得られた服薬管理の工夫は、【服薬指示理解と服薬の段取り】領域より〈服薬指示を記憶する〉など13の工夫、【薬の保管】領域より〈1週間分程の薬を手元に置く〉など10の工夫、【薬の飲み忘れ対策】領域より〈食事から服薬までを一連の流れで行う〉など9の工夫が見出された。各工夫を服薬アドヒアランス良群・不良群で比較した結果、共通または相違した服薬管理の工夫が見出された。2022年度は、前年度までに得られた研究成果を専門雑誌に投稿・掲載した。2023年度は、研究成果をもとに服薬管理について地域在住高齢者が集まる講演会にて話をする機会を2度得た。
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