慢性閉塞性肺疾患(COPD)における疲労感は、社会参加やセルフマネジメント能力にも影響を与え、患者の負担を増大させ、身体活動量にも影響を与えることから、疲労感の関連因子や発生機序の解明は喫緊の課題である。 2023年度は、地域高齢者を対象に新たなコホート研究として、129名に対し、呼吸機能、呼吸筋力、疲労感、認知機能を中心に測定した。その結果、COPDスクリーニングのための質問票(COPD-Q)でCOPD疑いありのカットオフ値である4点以上を満たした対象者は、54名(41.9%)であった。疲労感の評価指標であるChecklist Individual Strength (CIS)と呼吸筋力の指標である最大呼気流速(PEFR)の関連について検討すると、COPD-Q≧4点の対象者では、CIS合計スコア、主観的疲労感、集中力、意欲低下の項目において、PEFRと有意な相関を認めた。このことから、確定診断の出ていない段階から疲労感や呼吸筋力に着目する必要性が示唆され、今後の研究発展に向けての新たな検討事項となった。また、病院外来COPD患者を対象に疲労感、筋力低下、運動耐容能低下に関するバイオマーカーの有用性を明らかにすることを目的に横断および観察研究のリクルート準備を進めていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響の大きく受け、研究協力施設における外来診療やデータ測定の制限により、計画に大幅な遅れが生じており、具体的な成果として報告できるまでは至っていない。病院外来COPD患者を対象とした疲労感、筋力低下、運動耐容能低下に関するバイオマーカーの有用性を明らかにすることを目的とした横断および観察研究については、今後も継続して実施していく予定である。
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