研究実績の概要 |
本研究では、新たにパーキンソン病の診断がついた高齢者を対象とし、①医療・介護サービス利用状況、②定期的な医療・介護サービスの利用が入院に与える影響、③睡眠薬使用が転倒に伴う骨折に与える影響、について定量的に評価した。 2020年度は、福岡県後期高齢者医療広域連合のレセプトデータと介護保険データのデータベースへの取り込みと補正を行った。また、上記①について分析した。 2021年度は、4月に開催された国際学会で上記①について分析した結果を発表した。また②については、一般化線形モデルを使用して分析をしたところ、受診頻度が高いと入院日数、医療費を有意に減少させることがわかった。この結果について作成した論文は国際誌に掲載された。 2022年度は、レセプトデータを用いて睡眠薬処方の実態について横断研究を行い、患者の約半数が処方を受けており、特にガイドラインでも推奨されていないベンゾジアゼピン系の処方割合が高いことが明らかとなった。この結果については、学会発表を行った。また、上記③の睡眠薬使用が骨折を含めた損傷に与える影響について分析を行い、2023年度に論文が国際誌に掲載された。 また、2023年度は、高齢パーキンソン病患者における脂質異常症治療薬と予後の関連についても研究を行った。対象者は9,247名で5年間追跡し、スタチン系とスタチン系以外の処方における死亡に対する生存時間分析を行った。スタチン系の処方により、高齢パーキンソン病患者では有意に死亡リスクが低下することが示唆された。脂質異常症治療薬の服薬中断によってパーキンソン病の発症リスクが上昇するとの報告があることから、中断することでパーキンソン病が進行することも考えられる。そのため、医療従事者や支援者による継続した服薬管理の必要性が示唆された。本研究については、学会発表を行った。
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