研究課題
2021年度は手洗いの有効例(合格)と無効例(不合格)の加速度波形から工程ごとの代表点を抽出し評価と検討を行った。本研究では、手洗い後に手のひらのアデノシン三リン酸(ATP)を測定し、2000[RLU]以下になった手洗いを有効例、それ以外を無効例としている。2019年度で得られた成果を基にデータ測定を行い、有効例と無効例の各工程の波形を抽出した。抽出後、各工程の加速度のパワー比率を求め除去率との相関関係を求めた。パワー比率が大きいほど有効な手洗いが行えると仮説を立てていたが、手を動かすパワー比率が有効な手洗いに大きく関係しないことが確認できた。また手洗い前のATP値を有効例と無効例の2群に分け比較を行った。手洗い前のATP値が高すぎると除去率が高くてもATP値が2000[RLU]以下にならず無効例となることが確認できた。これらの結果から、加速度のパワー比率の大小と除去率は大きく関係しないこと、除去率が大きくても事前のATP値が高いと合格しないことから、日常的にATP値が下がるように指導・教育する必要があると考えられた。またデータ測定法の改善として、手洗いの良否判定には事前のATP値を一定の範囲にし、擦過力の評価が必要であることも考えられた。ATP値の一定化は超音波洗浄機を用いた予備洗浄、擦過力の評価には筋電図が有効と考えており、両方とも予備的な知見をすでに得ている。2022年度は以上の成果を基に改善したデータ測定を行い、評価を行っていく予定である。
3: やや遅れている
得られた加速度波形データから、手洗い法の理想動作確立を目指す予定ではあったが、加速度波形だけでは有効な動作を確認することが出来なかったためである。しかし超音波洗浄や筋電図を使用した、新たな測定・評価方法を確認することが出来た。これらの成果は2022年度で学会発表予定である。
2022年度は、2021年度で得た成果であるATP値の統一と擦過力の評価を行う予定である。具体的には、データ測定前に超音波洗浄を行い、被験者のATP値を一定値に近づけ、ATPを手のひらに塗布し事前のATP値を一定の範囲に保つ。その後モーションセンサによる加速度波形だけでなく、手のひらに加わる擦過力を筋電図で測定し評価を行っていく。
2021年度では、物品費として予算申請をしていなかった筋電センサを本研究の課題解決に必要と考え新たに申請したが、学会発表や新型コロナウイルスの影響により協力いただいている医療機関へのデータ測定が行えず、旅費等が未使用となり次年度使用額が生じた。次年度は物品費として、並列処理を行うPCを計上する予定である。旅費等については、すでに学会発表の採択をいただいているのでこれに使用する。その他については英文校正や論文執筆に使用する予定である。
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