研究課題/領域番号 |
20K19257
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
高橋 純子 北陸大学, 医療保健学部, 教授 (60636596)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 救命救急 / AED / 高齢過疎地域 / 電動カート(WA-MO) / 市バス |
研究実績の概要 |
本研究は、輪島市内を循環する小型電動カートやのらんけバスにAEDを搭載し、場所を問わない新たなAEDの活用スタイルを築くことを目的とする。今年度は、輪島市民に対して一次救命措置やAEDの使用方法について教育の場を提供することを計画し、高齢者が一次救命措置について実施の可否を検証する予定であった。しかし、コロナ感染の影響により、対面による教育・トレーニングは困難であった。待機中は、昨年度得たデータの分析をし、以下に示す課題を見出すことができた。 輪島市民に対し、一次救命に関する救命意識やその知識・手技に関する質問紙調査を行った。288人の有効回答を得た。 1)各年齢層からみる救命活動に対する関心について、「関心がない」、「関心が薄い」と多く回答したのが10代の学生であった。また、救命活動に対する恐怖心やためらいの原因として、意識のない人への対応、AEDの取り扱い、自身が行う救命活動が傷病者に与える影響を要因とし、実際の救命活動における参加の可否についても、「参加しない」、恐怖心があると回答が多かったのが70、80代以上、10代であった。 2)各職種からみる救命活動に対する関心について、「関心がない」、「関心が薄い」と多く回答したのが学生、パート・アルバイト、主婦であった。また、実際の救命活動における参加の可否についても、「参加しない」、救命措置などの講習の参加経験がない、AEDに対する恐怖心がある、AEDの使用ができないと多く回答したのは主婦、学生、自営業・自由業であった。 3)AEDの認知の有無からみる救命活動に対する関心については、認知がある人の方が救命活動に参加する意思の割合が高く、実際に救命の場面に遭遇した場合にもその活動に参加できると回答した割合も高いことがわかった。AEDに対する正しい知識を持つことは、救命活動に対する自信や勇気を持つことにつながることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度2020年度計画の輪島市民を対象に救命救急に関する意識及び知識の調査(対面及び郵送)は予定どおりに実施できたが、2年目である2021度予定していた輪島市民に対するAEDの講習(実技・講義)の実現がのコロナ感染の拡大の収束がつかず、困難であった。対象の半数以上が、高齢者を予定しており、ワクチン接種の状況も対象者によってはばらつきがあること、高齢に伴い基礎疾患がある方が多い状況から、市の指導もあり今年度の研究については断念せざるを得なかった。可能であれば、2022度に全ての計画を満了し、予定通り終了をさせたいと考えているが、冬季になれば感染拡大の兆しも現れる可能性もあることから、輪島市と調整しながら進めていく予定である。2021年度は対外的な研究活動ができなかったので、昨年度得られたデータを解析し、学会発表へとつなげた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度前半期は、輪島市と調整し第1段階の調査結果の報告及び課題について情報を共有する。また、一次救命処置及びAEDの取り扱いについて教育・実践のスケジュールを確認する。後半については、消防署や市の交通企画課との連携を図り、教育・実践における対象者の抽出を行う。現時点では、50名ほどを検討しているが、コロナ感染拡大防止などの影響も鑑み、人数は市と相談しながら決定していく。教育の場には、AEDの販売メーカにも協力を得ながら、高齢者に理解しやすいような平たい説明となるべく時間を多く取りながら、機器の説明と操作方法の教示を検討している。さらに、車内へのAEDの取り付けについてもメーカーなど専門的な立場からのアドバイスも得ながら、誰もが使用しやすい環境を作れる準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回、輪島市内において研究対象者への一次救命処置及びAEDの操作に関する対面での講習・教育を必要とした。しかし、コロナ感染拡大防止の観点から、実施に至らず、会議費用、旅費、人件費などの費用を使用することがなかった。2022年度は、感染拡大の状況が減少する頃合いを見計らい、輪島市と日程調整の上、前述の内容を実施していく。
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