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2021 年度 実施状況報告書

認知症の人のタイムシフト現象とその支援方法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 20K19269
研究機関東大阪大学短期大学部

研究代表者

野口 代  東大阪大学短期大学部, その他部局等, 助教 (80744854)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード認知症 / タイムシフト / BPSD / 介護 / 研修 / 災害 / 危機認識
研究実績の概要

認知症の人が古い過去の記憶の中で生きているような認識を持っており、現実とは違う世界にいるような状態は「タイムシフト(Time-shifting)」現象と呼ばれている。本研究では、どのような人がタイムシフトを起こしやすいのかをより詳細に把握し、またその対応法を確立することを目的とした。
その中で、令和3年度は、現在の状況から、COVID-19パンデミック下における認知症の行動・心理症状(BPSD)の発生状況や、治療・対応方法を明らかにするために、コロナ禍で公表されたBPSDに関するシステマティック・レビューを系統的に調査した。データベースに2021年11月までに登録された、認知症や、BPSD、 COVID-19に関連するキーワードを含む文献(48件)を精査し、5件の研究が分析対象となった。分析の結果、パンデミック下において、①BPSDの悪化または新規発症がみられる、②その中でも、長期の隔離によるアパシー、不安、興奮が多い、③対応としては、本人と介護者への心理教育的・心理社会的介入の有効性が期待されるが、コロナ禍という現実的な制約によって薬物療法への依存が強まっている、④遠隔支援、アシスティブ・テクノロジーの活用などの効果については結論が出ていない、ということがわかった。
また、我が国における在宅の認知症の人のタイムシフトの状況に関する調査研究を行った。家族介護者331名にWebによる調査を行い、認知症の人の背景情報と、タイムシフトに関する情報を収集した。その結果、タイムシフトをみたことがある家族介護者は、全体の47.1%であり、その中で、毎日タイムシフトがみられると回答した人は27.6%であった。さらに、アルツハイマー型認知症は、他の認知症のタイプと比べてタイムシフトしやすく、また要介護度が高い人ほどタイムシフトしやすいということが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度は、介護施設等における新型コロナウィルス感染症の流行により、施設訪問によるインタビュー調査や質問紙調査が予定通りにできず、家族介護者へのWebによる調査研究を中心に行った。また施設関係者の勤務状況やスケジュールにも大きな影響が出たことにより、打ち合わせの回数が少なくなった。参加や発表を予定していた学会の年次大会についても、オンライン開催などが主であったため、それによる情報収集や情報交換が不十分であった。そのため進捗状況はやや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

これまで行ってきた認知症のタイムシフトに関する情報収集は今後も継続して行う。また昨年度行った我が国における認知症の人のタイムシフトの状況に関する調査の結果に基づき、今年度は、タイムシフトした認知症の人への具体的な支援・対応方法の有効性について調査研究を行う予定である。具体的には、これまで記述的に事例報告がなされてきた「気を紛らわせるテクニック(Redirect)」や「治療的な嘘(Therapeutic lying)」などの対応方法の効果について調査を行う。そして、これらの研究の結果に基づき、タイムシフトの理解や対応・支援方法に関するマニュアルなどの開発・整備につなげていくことを計画している。また、研究の経過や成果について、学会の年次大会での発表や、英文誌、和文誌への投稿を行っていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

昨年度は、介護施設における新型コロナウィルス感染症の流行により、施設訪問によるインタビュー調査や質問紙調査が予定通りに進まなかった。また施設関係者の勤務状況やスケジュールにも大きな影響があり、打ち合わせの回数も少なくなった。参加や発表を予定していた学会の年次大会についても中止や、オンライン開催などが主であった。そのため、旅費および謝金等が計画よりも少なくなり、これらにより918,898円が令和4年度に繰り越されることになった。
繰り越されることとなった918,898円については、今年度実施予定のタイムシフトした認知症の人への具体的な支援・対応方法とその有効性についてのWeb調査の実施費用および昨年度予定よりも少なくなった施設への訪問のための旅費、謝金等として使用する予定である。また施設関係者との打ち合わせや、学会の年次大会への参加は、今後、対面とオンラインの両方で行っていく予定であり、そのための環境整備に、繰り越した資金の一部を充てる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] COVID-19パンデミック下における認知症の行動・心理症状(BPSD)に関する研究動向 ―システマティック・レビューの概観―2022

    • 著者名/発表者名
      野口 代
    • 雑誌名

      東大阪大学・東大阪大学短期大学部教育研究紀要

      巻: 19 ページ: 1-8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 認知症ケアのスタッフに対する心理職による教育的支援 BPSDのABC分析2021

    • 著者名/発表者名
      山中克夫, 野口 代
    • 雑誌名

      精神医学

      巻: 63 ページ: 1231-1237

  • [雑誌論文] 認知症の人のタイムシフト現象2021

    • 著者名/発表者名
      野口 代
    • 雑誌名

      地域ケアリング

      巻: 23 ページ: 48-49

  • [学会発表] 老年行動科学のネクストステージ2021

    • 著者名/発表者名
      岡本多喜子, 大川一郎, 成本 迅, 堀口康太, 田中真理, 野口 代
    • 学会等名
      日本老年行動科学会第23回東京大会
    • 招待講演
  • [図書] 福祉心理学2022

    • 著者名/発表者名
      野口 代 (担当:分担執筆, 範囲:第13章 認知症)
    • 総ページ数
      234
    • 出版者
      医歯薬出版

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公開日: 2022-12-28  

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