研究課題/領域番号 |
20K19274
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
蔵本 綾 香川大学, 医学部, 助教 (20849640)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 統合失調症 / Sense of Coherence / パーソナルリカバリー / セルフスティグマ / 地域生活 |
研究実績の概要 |
地域で生活する統合失調症者のSOC(Sense of Coherence:首尾一貫感覚)に関する文献検討を行った。特定集団の当事者である自身の自身に対する否定的な考え方であるセルフスティグマは、当事者のパーソナルリカバリーを妨げるものであるが、SOCがセルフスティグマの影響を緩和することが報告されている。各概念は関連しあっていることが推測され、今後、SOC向上のための介入プログラムの検討に向けて、SOC、セルフスティグマ、パーソナルリカバリーに関する調査を行った。 背景要因をある程度均一化するため、「中四国地方の精神科デイケアを半年以上利用しながら地域で生活している18歳以上の統合失調症者」を対象とした。COVID-19の影響が継続していること、当事者に回答を依頼するにあたりオンラインでは困難が想定されることから、郵送での調査とした。2022年9月から2023年2月にかけて、15施設計270名に調査票を送り、149名より返送があった。そのうち、研究協力に同意の得られなかったものや対象者の選択基準に合致しないものを除いて140名の回答を分析対象とした。 セルフスティグマがパーソナルリカバリーに影響を与える中で、SOCがセルフスティグマ、パーソナルリカバリーそれぞれに影響を与えるという仮説モデルを設け、構造方程式モデリングにより概念間の関連を検討し、その適合度は概ね妥当であった。 SOCは直接パーソナルリカバリーを促すのではなく、セルフスティグマの影響を軽減することでパーソナルリカバリーを促進すると考えられた。活動を通して当事者が自身の経験を振り返る機会をもち、グループ間でその経験を共有できるようにするとともに、支援者自身の支援を振り返ることで、統合失調症者のセルフスティグマの軽減およびSOCの向上へとつながり、ひいてはパーソナルリカバリーが促進される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はインタビューによる調査を計画・実施していたが、COVID-19の流行に伴い施設立ち入りが困難となり、一時中断となった。その後、経過を見ながら調査再開を検討していたが、COVID-19による影響は継続し、中断期間が長期に及んだこと、流行前後で生活が大きく変わったことから、インタビューが再開できた場合でも、流行前に取得したデータと併せての分析は困難であると判断し、感染拡大前にインタビューを行った6名のデータで分析を行った。また、関連する内容で別の研究計画を立案・実施中である。当初の計画からはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
デイケア利用中の統合失調症者を対象とした研究に関しては、データ収集・分析が終わり、論文投稿中である。 また、インタビュー調査に関しても、COVID-19流行前に取得した6名のデータで分析を行うこととし、所属施設の倫理委員会に研究計画の変更を申請し承認を得た。分析を行い、結果についてメンバーチェッキングを受けた。学会発表を行い、今後は論文投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の流行に伴い、研究遂行が一時困難となり予算を使用できなかったため、初年度より次年度使用額が生じていた。また、当初の計画では、学会等に現地参加を予定しており、移動費および宿泊費を計上していたが、COVID-19流行に伴い関連学会の開催方式がオンラインに変更となったため、予算執行額が減少した。 2023年度は論文投稿に向けて英文校正・論文掲載費等で使用を予定している。また、学会も現地開催が再開となってきているため、移動費および宿泊費としても使用予定である。
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