わが国においてASD者に対して訪問看護師がどのような看護ケアを実践しているかを明らかにすることを目的とし、自閉スペクトラム症(以下、ASD)者への訪問看護ケアを実践している訪問看護師を対象とし、インタビュー調査を行った。その結果、「共感を伴った主観的なとらえと客観的なとらえのバランス」、「指導・教育の回避」、「受容と積極的な関心の元で実践される利用者の内面に向けた援助」、「話ができる関係性の構築に向けた援助」、「コミュニケーション障害をふまえた思いの表出と気付きの促し」、「利用者・家族を一体としてとらえた援助」、「利用者を支える家族への援助」、「他機関との連携とその要の役割」、「家族介入の難しさ」、「訪問看護ケアの範疇を判断する難しさ」、「不十分な連携の元での援助の難しさ」の11のカテゴリーが抽出された。ASD者への訪問看護を実践している看護師は、「共感を伴った主観的なとらえと客観的なとらえのバランス」を意識しながらASD者を偏らない視点でとらえようとしており、訪問看護が継続できるよう利用者、家族の意向や希望に沿えるように「指導・教育の回避」がベースにあった。それらを基に、ASD者への援助として、「受容と積極的な関心の元で実践される利用者の内面に向けた援助」、「話ができる関係性の構築に向けた援助」、「コミュニケーション障害をふまえた思いの表出と気付きの促し」があった。また、家族を援助対象とした「利用者・家族を一体としてとらえた援助」、「利用者を支える家族への援助」があった。加えて、「他機関との連携とその要の役割」を担い、ASD者の社会参加に向けて支援していた。同時に、「家族介入の難しさ」、「訪問看護ケアの範疇を判断する難しさ」、「不十分な連携の元での援助の難しさ」を語っていた。
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