自然災害発生時における住民の初動体制構築のために立案した地区防災計画を基に、1泊2日の避難所宿泊訓練を実施し、計画の有用性を検証することを目的とした。特に、令和2年度で重点課題として同定された「①避難行動」「②避難所開設・運営」「③必要な資機材・物資の備蓄品」に関する計画の有用性を検証した。 令和3年度にて地区防災計画を立案した山梨県A市B地区を選出し、自治会長や自主防災会等でワーキンググループを立ち上げ、計画を基に1泊2日の避難所宿泊訓練の計画を立案した。地区防災計画は、パンフレットにして地域住民へ配布して周知した。 訓練ではまず「①避難行動」訓練を実施し、避難経路等を確認した。次いで「②避難所開設・運営」訓練を実施した。避難所内の各所やトイレには消毒剤を設置した。トイレではエアーサンプラー法およびスタンプ法を用いて訓練前後にて検体を採取した。また、避難所内でよく触れる場所を検体採取場所とし、スタンプ法を用いて訓練前後に採取した。そして、食事担当者を対象に、手洗い前後の手指よりスタンプ法にて検体を採取した。サンプリングした培地は培養した。地区防災計画を基に訓練を実施することで、住民が共通認識と共通理解を持って有事の際の対応が可能となること、消毒剤を用いることでトイレや避難所環境、手指の清潔はある程度保持されることが明らかになった。しかし、課題として、避難所内の騒音やトイレの臭気等の衛生保持問題と清掃問題、「③必要な資機材・物資の備蓄品」では感染症対策物品の不足等が挙がった。 本年度の研究では、地区の地域特性を考慮した地区防災計画を立案し、訓練を実施した結果、計画の有用性は確認できた。しかし、新たな初動体制の課題も明確になったため、今後も初動体制の構築のために検討を継続する必要がある。
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