本研究は、訪問看護師の的確な難聴の把握および看護援助を促進するために「訪問看護師を対象とした難聴高齢者支援研修プログラム」の構築とその効果を明らかにすることを目的にしている。 令和2年度、事前実施した「訪問看護師の補聴器推奨の現状と難聴高齢者との会話における困難と工夫」の総括から、「訪問看護師を対象とした難聴高齢者支援研修プログラム」の試案を作成した。プレテストを実施し、プログラムの内容や所要時間、アンケート項目の文言など校正した。令和3年度、1群介入前後比較調査にて、12施設の訪問看護ステーションの調査協力を得て「訪問看護師を対象とした難聴高齢者支援研修プログラム」の介入を実施した。令和4年度、介入による効果について分析し、「訪問看護師を対象とした難聴高齢者支援研修プログラム」が知識・技術・行動において有意に効果があったことを確認した。令和5年度、「訪問看護師を対象とした難聴高齢者支援研修プログラム」の更なる内容検討のため訪問看護師に対し高齢者の難聴ケアの実態について全国調査を実施した。訪問看護師1361名を対象に、難聴ケアの実態として知識・アセスメント・ケア・多職種連携・困難感についてWeb調査を実施した。結果、難聴ケアの知識は、全項目で60~90%の訪問看護師がもっていなかった。アセスメントは全項目で50~100%、ケアは1項目を除くと40~100%の訪問看護師が実施しておらず、全般的に低かった。多職種連携は全項目で60~90%の訪問看護師が実施していなかった。困難感は、難聴の程度のアセスメント(約80%)、耳垢の除去(約73%)実施時の困難感が高かった。訪問看護師に対する難聴ケア教育の必要性が強調されたとともに、「難聴高齢者支援研修プログラム」にさらに含めるべき具体的内容が明らかになった。
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