研究課題/領域番号 |
20K19293
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
森 礼子 日本福祉大学, 看護学部, 准教授 (70733038)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地域DOTS / リスクアセスメント票 / ベトナム人結核患者 / 結核患者支援 / 結核看護 |
研究実績の概要 |
国内の結核罹患率は年々減少している一方で減少の枷となっているのが外国出生結核患者の増加である。2020年以降、新型コロナによる出入国規制で外国人の来日が減少したことに伴い外国出生結核患者数も若干減少したものの、規制が解除されれば再び患者数の増加が予想され、今後も地域DOTSの担う役割は大きい。しかし、地域DOTSで患者支援計画の根拠となるリスクアセスメント票は外国出生者用のものはほとんどなく、日本人用のものを代用している状況である。適切な患者支援を行うためには、患者の出生国の特徴を加味したリスクアセスメント票が必要である。本研究では、外国出生者の中でも近年国内で急増しているベトナム人結核患者専用のリスクアセスメント票を開発することを目的とした。ベトナム人患者専用のリスクアセスメント票を開発することで、ベトナム人結核患者に質の高い支援が提供でき、地域DOTS成功率の向上につながる。また、DOTS支援を行う保健師への効率的、効果的な活動に寄与できる。 これまでの研究では、①ベトナム出生者および結核の治療中断に関する先行研究の文献検討を行い、服薬中断するベトナム出生結核患者の特徴と課題を整理した。②服薬中断リスク項目を明らかにするために、地域DOTSで保健師と患者の通訳をしたベトナム語通訳者(医療通訳者レベル)5名に通訳を通して患者の服薬中断リスクについてインタビューした。その結果、異なる言語、結核の理解、日本での生活背景・社会的背景に治療中断となるリスクが抽出された。①と②、および日本で使用されているリスクアセスメント票項目の標準化に試みた研究結果(森ら,2019)を参考に、ベトナム出生結核患者版リスクアセスメント票の素案を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、1年目に服薬中断したベトナム人結核患者の対応経験のある保健所保健師へのインタビュー調査、2年目に保健所を対象とするアンケート調査を予定していた。しかし、新型コロナ感染症の拡大により、第一線で公衆衛生活動を担う保健所への調査は難しい状況となり、終息時期を見計らっていたが、研究計画を変更することとした。そのため、本研究の進捗状況としては1年ほどの遅れがある。 研究計画については、1年目に行うインタビュー調査の対象者を保健所保健師としていたが、新型コロナ感染症対応等で多忙を極めていることから、依頼は困難な状況であると判断し、対象者を医療通訳も可能なベトナム語通訳者に変更した。ベトナム語通訳者は、ベトナム語と日本語を言語で橋渡しをするだけでなく、双方の文化的な背景や健康観等を認識しているため、ベトナム人結核患者の服薬中断リスクをインタビューから抽出できると考えた。通訳者の視点から服薬中断リスクと感じていること等を聞き取り、ベトナム人結核患者の服薬中断リスク要因を抽出した。 現在、抽出したリスク要因と先行文献、森ら(2019)が標準化を試みたリスク項目を参考にして、ベトナム人結核患者用リスクアセスメント票の素案を作成したところである。
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今後の研究の推進方策 |
作成したベトナム人結核患者リスクアセスメント票の素案(以下、【素案】)とする)について、今後、結核研究者(特にDOTSに関する研究をする専門家ら)に各リスク項目に関しての意見を伺い、それを基に【素案】を修正する。計画当初は、専門家らから意見を求める計画はしていなかったが、ベトナム人患者と保健師との通訳対応を通して服薬中断リスクと感じているものであるため、【素案】作成の段階で、専門家らからリスク項目に対する意見を求め、検討しておく必要があると考えた。 次に、専門家らの意見を参考に検討した【素案】を保健所へ郵送し、実際にDOTSで対応したベトナム人結核患者にリスクアセスメント項目を照らし合わせて回答を求める質問紙調査を実施する。その調査によって、リスク項目の妥当性を図る。新型コロナ感染対応については、2022年5月の連休期間には外出自粛規制も解除されていることから、今後保健所の業務も緩和の方向に向かっていくと思われ、現段階では予定通り、質問紙調査を実施する。しかし、今後の新型コロナ感染状況によっては、計画の変更の可能性もある。 質問紙調査の実施後は、結果を分析して【素案】の修正を行い、リスクアセスメント票【素案】の利用可能性を見るために、保健所で試行調査を依頼し、検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により予定していた計画が未実施の状況であるため、当初の予算の執行が遅れている。また、研究計画の変更が生じており、予算内容も変更となっている。 主に次年度に持ち越されたのは、アンケート調査実施でかかる予算と旅費である。アンケート調査に関しては、今後、郵送による調査を予定しているため、予算消化できると考える。 旅費に関しては、昨年に引き続き、各学会の開催がオンラインで行われていることや海外での学会発表が中止されていることが多く、計上した予算が消化できていない状況である。
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