慢性腎臓病はステージの進行に伴い、尿毒症物質が体内に蓄積し続ける。このメカニズムには、酸化ストレスが関与していると考えられているが、その詳細は不明である。近年、慢性腎臓病患者に対する運動療法が提言されている一方で、運動療法の有効性についての根拠は未だ少数である。申請者はこれまでに腎不全モデルラットにおいて長期的運動が糸球体硬化や腎間質線維化を抑制すること明らかにしてきたが、慢性腎不全患者の組織内で過剰な酸化ストレスを惹起させる尿毒素への影響については明らかでない。そこで長期的運動が尿毒素物質の体内蓄積および尿毒素物質蓄積により惹起されるウレミックサルコペニアへの長期的運動の効果について検討した。雄性Sprague-Dawleyラットを用いて5/6腎摘除慢性腎不全モデルを作製し、偽手術群、5/6腎摘除慢性腎不全群、5/6腎摘除慢性腎不全+運動群の3群に分け、12週間にわたって介入を行った。運動は、ラット用トレッドミルを用いて有酸素運動を60分/回、5回/週行った。介入中は収縮期血圧および尿蛋白排泄量を測定し、介入後に血漿、腎臓、下肢骨格筋を採取し、検討した。腎機能および収縮期血圧は偽手術群に比べて慢性腎不全によって上昇し、運動によって改善した。また尿毒素は慢性腎不全によって上昇し、運動によって低下した。腎の解析では、酸化ストレスは慢性腎不全によって増加し、運動によって減少した。慢性腎不全における運動の有効性の機序は、腎内活性酸素の発生抑制が関与している可能性が考えられる。
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