研究課題/領域番号 |
20K19303
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
久保田 茂希 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (90763798)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロボットリハビリテーション / 腕神経叢損傷 / 表面筋電図 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、腕神経叢損傷における肘屈曲再建術である肋間神経移行術に対して、ロボットを用いた新たなバイオフィードバック技術を用い、その筋電図学的有効性を明らかにすることである。本目的を達成するべく、腕神経叢損傷を受傷し肘屈曲再建術が施行された症例に対して、上肢ロボットを用いたバイオフィードバック訓練を行い、筋電図学的評価を実施している。肘に装着した上肢ロボットは、検知した上腕二頭筋の筋活動情報を利用して、肘関節屈曲動作を患者本人の肘を曲げようとする運動意思のタイミングと同時に肘屈曲動作をサポートすることができた。上肢ロボット訓練は、患者自身での肘屈曲動作ができない筋力[1]の段階から実際に患者の肘関節を屈曲し得るため、術後神経回復の一助として機能している印象がある。 研究開始から現在までに、2症例が研究参加登録し、上肢ロボットを用いたバイオフィードバック訓練を継続中である。上肢ロボットを用いた訓練回数は、2週1回程度の頻度で、合計37回、外来通院にて実施された。訓練1回の所要時間は、評価を含み90分程度であり、1回の訓練では、適宜、休憩を挟みながら、肘関節屈曲動作10~20回を5~10セット実施し、筋電図学的評価を実施している。筋電図学的評価では、上腕二頭筋筋力[1]~[2]の時期に、無線式筋電図計測装置を用い、肘屈曲を命じた状態の上肢ロボット装着時と非装着時の上腕二頭筋の筋活動を比較した。2症例の暫定結果であるが、上肢ロボット装着肘屈曲時の上腕二頭筋筋活動は、非装着での肘屈曲時に比べ、有意に高値を示したため、腕神経叢損傷後肋間神経移行術による肘屈曲再建術後患者において、上肢ロボットを用いたバイオフィードバック訓練は、筋電図学的に良質かつ有効的なバイオフィードバック訓練ツールとなりえる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腕神経叢損傷肘屈曲再建術(肋間神経移行術)後の2症例に対して、現在、上肢ロボットを用いた肘屈曲バイオフィードバック訓練を継続実施中である。現在までに、重篤な有害事象なく安全に上肢ロボットを用いた訓練を実施可能であり、無線式筋電図計測装置を用いた筋電図学的評価も計測可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は新たに3~5症例を新規症例として、今年度と同様に上肢ロボットを用いたバイオフィードバック訓練と筋電図学的評価を実施予定である。訓練頻度は、今年度と同様に週1回~2週1回の頻度とし、訓練1回につき肘関節屈曲・伸展動作を10~20回、5~10セット実施予定とするが、疲労度を考慮し、回数、セット数を適宜、調整していく。肋間神経移行術は年間およそ3~5件程度であり、症例数が乏しいことが危惧され、研究が当初の計画通りに進まないことが予想されるが、引き続き本学整形外科関連病院に通知し、術後のリハビリテーションを当院リハビリテーション科で実施できるよう症例の受け入れ体制を、整備・強化し、対応する予定である。また、研究継続中の症例について、筋電図学的評価結果をまとめ、学会報告、論文化を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に抄録投稿を予定していた国際学会、国内学会への学会発表を新型コロナウィルス感染拡大の影響により断念したため、旅費での大幅な実支出額の減額があった。予定していた国際学会、国内学会での学会発表を果たし、そのための旅費及び学会参加費として使用予定である。
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