研究課題/領域番号 |
20K19306
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉田 彬人 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 助教 (70849900)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性疼痛 / 脳機能解析 / 運動恐怖 / 情動 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
慢性疼痛の運動恐怖を含む精神症状は、運動学的指標を用いた検討も行われている、本研究の知見を得るために、該当テーマについて網羅的に文献検索を実施した。脳磁図-脳波による大脳皮質活動の同時計測が円滑に実施できるよう予備実験を重ねた。分析対象となった先行研究では、「動作の所要時間」、「角速度」、「角加速度」、「速度」、「角度変位」、「平均運動量」、「足圧」の指標が用いられていた。強い運動恐怖を有する腰痛患者では、物体を床から持ち上げる課題を遂行する所要時間が、体幹伸展加速期・減速期において延長していた。 慢性疼痛患者が抱える精神・認知機能の多様性を検討するため、既存の臨床データを用いた2段階のクラスター分析を行った。抑うつ、疼痛に対する不安によるクラスター分類の場合、両症状の有無とカットオフ値近傍の3群に分けられた。症状を認めない群と比較して、評価指標のカットオフ値が境界近傍にある群、症状を認める群では、日常生活活動のパフォーマンスが優位に低下していた。一方で、年齢、性別、疾患重症度、筋力、感覚機能に統計学的有意差を認めなかった。精神症状は、日常生活活動に影響を及ぼす独立した要因であることが明らかとなり、疼痛患者の精神症状を客観的・定量的に捉えることの臨床的重要性が示された。 筋力、疾患重症度等の評価項目の特徴を検討し、学術誌に投稿している。 異なる技術的アプローチによって得られた知見と自験例の臨床データを用いた後ろ向き研究の実施により、本研究の目的である慢性疼痛関連情動の定量的・客観的評価指標の開発への知見を広めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度に計測環境の整備を完了し、2021年度より慢性疼痛を有する患者を対象とした脳機能計測を予定していた。一方で、愛知県における2021年度のCOVID-19感染者は5月中旬、8月下旬、2月中旬をピークとして推移し、愛知県緊急事態措置(4月1日継続、7月~8月、10月)、まん延防止等重点措置(4月~5月、6月~7月、8月、9月)等が発令された。狭小スペースでの計測を余儀なくされるため感染予防等の観点から、対象者(慢性疼痛患者)のリクルートについて慎重に検討を続けた。上述の通り、社会情勢の影響を受け、データ計測が遅れているが、速やかに脳機能計測が実施できるよう同所属機関内の研究協力者等との予備実験を可及的に実施した。
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今後の研究の推進方策 |
感染対策を講じながら、2021年度に予定した被験者データの計測を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者のデータ計測が予定よりも遅れる見込みとなったため、既存データの分析によって知見を広げる研究活動を実施した。また、次年度からの円滑なデータ計測が可能となるよう、環境整備を再検討した。
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