研究課題
本研究では、Virtual reality(VR)などの最新テクノロジーを用いた回想法と統合医療のハイブリッド型アプローチ(視覚・聴覚・嗅覚同時刺激)が、認知機能低下やBPSDの抑制、介護者のQOLの向上に寄与できるのかを明らかにすることを目的としている。令和3年度は、VRによる視覚刺激に着目したフィージビリティ―スタディを完遂し、次いで、回想法と統合医療のハイブリッド型アプローチの有用性を検討する臨床試験を開始した。フィージビリティースタディでは、介護施設利用者の内65歳以上の方で、ミニメンタルステート検査日本語版(MMSE-J)が27~24点の方45名を対象とし、介入群24名と無介入群(通常ケア群)21名に分類した2 群間並行ランダム化比較試験を行った。その結果、介入セッション前のSTAIスコア平均[mean(SD)]は34.0(2.0)であったが、介入後セッション後には29.8(1.4)へと減少した(p<0.001)。また、全介入セッションにおいてSTAI平均スコアがセッション前後で低下し、満足度の平均[mean(SD)]は7.8(0.3)であり、副反応はいずれも認められなかった。MMSE[mean(SD)]は介入群で1.5(3.9)低下し、非介入群で1.5(3.0)上昇した。このことから、VRを活用した回想法は軽度認知機能障害の方の不安を一時的に軽減でき、介入セッションを繰り返してもその効果は減衰することはない可能性が示唆された。フィージビリティースタディと並行して視覚・聴覚・嗅覚を同時刺激するハイブリッドシステムを構築し、コロナ禍にもかかわらず多施設での臨床試験に着手した。しかし、緊急事態宣言等で臨床試験を中断せざるを得ない状況になったため、現時点では介入群6名、無介入群2名が試験スケジュールを完遂したという状況で、令和4年度も引き続き臨床試験を継続中である。
3: やや遅れている
本研究は介護施設で実施している。令和2、3年度において、新型コロナウイルス感染症に関連した緊急事態宣言やまん延防止措置等の影響で臨床試験を中断せざるを得ない状況を数回経験したために、当初予定よりもやや遅れている。
引き続き臨床試験を継続するとともに、大規模検証にむけて地方自治体等と交渉を進める。
型コロナウイルスの影響で、国内外の出張や集合型の説明会等の開催が難しかったため、次年度使用額が生じた。令和4年度は、多施設での感染対策や大規模検証に向けた準備、視覚・聴覚・嗅覚を同時刺激するシステムを維持、増設するための費用として使用する予定である。
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