研究課題/領域番号 |
20K19315
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
中村 高仁 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 助教 (70847962)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳卒中 / 視線 / 反応 / 若齢者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、片麻痺者の方向転換動作時の視線行動に焦点を当て、課題条件に応じてどのように変化し、動作応答に影響を及ぼすかを明らかにすることである。 2021年度は、当初予定していた方向転換課題から光刺激に対する単純視線応答課題に変更し、若年健常成人における基礎的データの獲得を目的とした。光刺激に応答する際、姿勢や動作の違いによって、視線応答時間がどの程度変化するかについては、健常者においても十分な知見は得られていない。 若齢健常成人14名(男性5名、女性9名、21.0±0.8歳)を対象に、光刺激に対する視線応答課題について姿勢保持(座位・立位)・トレッドミル歩行条件を用いて検証した。光刺激の提示方向を事前に予告する単純反応時間と、予告しない選択反応時間を3次元動作解析装置およびアイトラッカーを用いて算出し、各条件における応答パフォーマンスの変化を検証した。結果、各条件における反応時間に差はなく、予告の有無によって反応時間が有意に短縮した(単純反応時間<選択反応時間)。若年成人においては、姿勢保持・歩行条件に関わらず一定の視線応答時間を示すことが示唆された。 今後の研究計画については下記に示す通り、協力施設にて脳卒中者の歩行・方向転換などの実動作に加え、机上での注視課題を縦断的に評価していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
光刺激に対する視線応答課題に関しては、若年成人による基礎的知見を得ることができた。 一方、脳卒中者の測定に関しては新型コロナウィルス感染症を含めた諸般の事情から、協力施設にて実施することに計画を切り替えた。研究室外での測定のため、3次元動作解析装置とアイトラッカーの同期計測が困難になったことで、取得できるデータの信頼性や手法の確立を改めて行うこととなり、当初予定していた進捗状況からは遅れがみられている。 しかし、今後は通年で協力施設内での測定が行えるよう調整済みであり、結果的に脳卒中者の視線行動を縦断的に測定できる環境を確立できたことはとても意義がある。
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今後の研究の推進方策 |
脳卒中者の測定課題については、歩行・方向転換などの実動作に加え、机上での注視課題を縦断的に評価する。協力施設は、一般的に維持期(発症から半年以上経過)とされる脳卒中者が入所されている。今後測定を進めることで、維持期脳卒中者の視覚注意機能が向上しうる可能性について検証することができる。代償動作の獲得や機能維持がリハビリテーションの目標とされる期間においても、脳卒中者の視覚注意機能向上が数値として示すことができれば、対象者のみならず我々リハビリテーション従事者においても非常に意義深い成果となると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会がオンライン開催となったことで、参加渡航費として使用予定であった予算を次年度に使用することとした。次年度は主に国内学会の参加費および研究成果投稿料として使用する。 また、協力施設での測定に切り替えたことで消耗品などの必要経費にも充てる。
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