研究課題/領域番号 |
20K19321
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
宮城 翠 東邦大学, 医学部, シニア・レジデント (70866574)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 頚椎アライメント / 嚥下障害 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
本研究は次の3点を目的としている。①後頭頚椎固定術後及び頚椎装具装着患者の嚥下機能及び嚥下障害重症度を明らかにすること、②後頭頚椎固定術後及び頚椎装具装着患者における頚椎アライメントを含む嚥下障害重症度を明らかにすること、③頚椎アライメントを主眼とした高齢者に向けた嚥下指導の有効性の検討規定因子を明らかにすること。 2020年度は後頭頚椎固定術後及び頚椎装具装着患者の嚥下障害における頚椎アライメントの連関を解明する目的で、対象症例22例を対象とした後方視的研究を行った。解析対象は20例であった。当院の診療記録より対象症例の患者背景の抽出、嚥下機能評価を行った。また頚椎レントゲン写真よりそれぞれの頚椎アライメント(occipito-C2 angle, C2-C6 angle, and pharyngeal inlet angle (PIA))の術前及び術後、更に術前術後の差について計測を行った。対象症例を、the Functional Oral Intake Scale (FOIS)を用いて、FOIS7点を非嚥下障害群、それ以下を嚥下障害群の2群にわけ、患者背景や術前術後の頚椎アライメントの2群間での比較検討を行った。解析の結果からは、術前のPIAが嚥下障害群で有意に小さい結果となり、術後頚椎アライメントや術前後の頚椎アライメントの差を含むその他の要因では有意差を認めなかった。従来嚥下障害の因子として着目されていた、術後アライメントではなく、術前アライメントが術後の嚥下障害に影響を及ぼす可能性が示唆された。この解析は現在論文投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は後ろ向き研究を行い、術前の頚椎アライメントが術後の嚥下障害に影響を与える可能性が示唆された。更にこの解析を行っている際、嚥下障害群では水分に粘性を付加したもの、いわゆるとろみを摂取している症例が多く見受けられた。粘性が付加された水いわゆるとろみ水(とろみ)が適切な濃度で作製されることの重要性を痛感した。このことから新たに、簡易的にとろみを計測できる機器「トロマドラー」の開発に至った(特許出願中)。トロマドラーは臨床の現場で食品で例えられることの多かったとろみの濃度を、従来の回転式粘度計とは異なる計測方法で測定し、数値化するために考案をした。従来粘度計測のゴールデンスタンダードとして用いられていたE型回転式粘度計との整合性を検証したところ、遜色なくとろみの濃度を測り分けることができる可能性も示唆される結果となった。この検証については論文を投稿し、日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌に受理されている。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度には2020年度以降当院の嚥下障害対策チームに依頼のあった高齢者を対象に、2020年度の後方視的研究で明らかとなった嚥下障害を引き起こす頚椎アライメントを基に嚥下リハビリテーション指導を行う予定である。2020年度の研究では、術前の頚椎アライメントが術後の嚥下障害に影響を与える結果となった。このことは頚椎疾患を抱える高齢者のみならず、あらゆる周術期の高齢患者にもあてはまる可能性がある。今まで嚥下リハビリテーションの分野で捨て置かれてきた頚椎アライメントの指導が確立すれば、今後の嚥下リハビリテーションにおける新しいアプローチの一つとなる可能性がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、予定していた情報収集のための国際学会参加及び国内学会参加が中止になった。次年度使用額としては国際学会参加費とさらに、コロナ感染拡大の影響をみながら、頚部周囲の筋肉を評価する目的で画像解析ソフトなど、研究を進めるうえで有用な備品の購入を検討している。
|