高齢化と共に誤嚥性肺炎の治療は喫緊の課題である。誤嚥性肺炎の原因として嚥下障害があり、その要因は多岐に渡る。多岐に渡る要因の1つに、頚椎を含めた脊椎の可動性の低下がある。脊椎の可動性の低下は、食事の際の姿勢不良から頚椎の過伸展を招き、嚥下障害を引き起こしやすいとされている。本研究では、頚椎が固定された状態である頚椎固定術後の患者に注目し、頚椎固定術後の患者の嚥下障害発症と嚥下障害重症度の規定因子を解明することを目的とした。 2021年度に発表した論文では頚椎固定術後の患者において術前の頚椎のアライメント(角度)が術後の嚥下障害発症の要因となる可能性が明らかとなった。 そこで、潜在的な姿勢不良が嚥下障害に影響を与えている可能性を考え、全身の骨格筋が低下する疾患であるサルコペニアと骨粗鬆症が合併したオステオサルコペニアに注目した。2019年に発表されたEWGSOP2にて骨格筋の質的低下がサルコペニアの診断に関与していることから、3D画像解析システムを用いて骨格筋・椎体骨を質的に評価し、嚥下障害との連関を解析し、骨格筋と椎体骨の質的低下がない群と双方の質的低下がある群を比較すると双方の低下がある群が嚥下障害重症度がより悪くなる結果となった(p = 0.05)。 また、これらの患者由来の嚥下障害の要因に加え、摂食嚥下リハビリテーション直接訓練法の1つである嚥下調整食品にも注目をし研究を行った。嚥下調整食品の中でも水分に粘性を付与し咽頭での流速を遅くする効果のあるとろみは、作成者により濃度にバラツキがあることが問題となっており、新たに簡易的にとろみの粘性を計測出来る機器を開発した。 これらの結果をもとに包括的な摂食嚥下障害に対するアプローチが期待される。
|