研究課題/領域番号 |
20K19328
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研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
吉弘 奈央 関西医療大学, 保健医療学部, 助教 (70828714)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 半側空間無視 / 機能的電気刺激 / 近赤外線分光法 / 上肢活性化 |
研究実績の概要 |
脳血管疾患後の高次脳機能障害として多く見られる半側空間無視(USN)は,一側にある物に対して気づけないことから,在宅生活を困難にする深刻な問題である.USNに対する一定の効果が報告されている介入の1つに麻痺側上肢の運動を行う上肢活性化という方法がある.しかしその効果のメカニズムは明確でなく,臨床場面での使用は少ない.そこで本研究では,上肢活性化がUSN症状を改善する根拠について近赤外線分光法(NIRS)を用いた脳機能イメージングの解析という観点からの明確化を図った. 令和2年度は,健常若年者13名を対象とし,機能的電気刺激(FES)を用いた際の脳機能イメージング解析を実施した.FES装置には伊藤超短波株式会社製のTrio300(SE-231)を使用し,左側の手指伸筋群に刺激電極を貼付した.刺激パルスの周波数は25Hz,パルス幅100μsec,筋収縮が得られる強度で通電時間5秒,休止時間5秒,計6分間に設定した.脳活動動態の測定には,近赤外光脳機能イメージング装置(LABNIRS, 株式会社島津製作所)を用いた.結果として,Oxy-Hb値について,右一次運動野においてFES実施前(-1.5×10-4)とFES実施後(1.3×10-4)で有意差を認めた(p=0.032).また,右縁上回においては,安静時(-29×10-4)とFES実施後(0.76×10-4)で有意差を認めた. 縁上回を含む腹側注意ネットワークは,刺激誘発性注意に関与するとされている.今回の結果からは,手指伸筋群へのFESが視覚的注意ネットワークの腹側経路を賦活させ,刺激誘発型の注意機能を向上させる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの蔓延により,研究対象者のリクルートが制限され,データ計測の進捗が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
今後はNIRS測定を継続して行い,対象者を増やすとともに,得られた結果からデータ解析をすすめ,FESを用いたUSNへの介入方法の立案を検討していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度使用を予定し計上していた研究費については,新型コロナウイルスの蔓延により実施予定であったデータ計測の進捗が遅れることとなったために,研究費を令和3年度に繰り越すこととした.令和3年度はデータ計測に追加で必要となる備品や,現在応募中である国際学会の旅費等に研究費を使用する予定である.
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