トレッドミルでの歩行練習効果は平地とトレッドミルでの歩容が類似しており、転移性が高いという運動学習理論に基づいている。一方で、臨床においてトレッドミルでの歩容が、平地での歩容と大きく異なる患者もいる。そのような患者においては、運動学習の観点からトレッドミル歩行練習効果は、小さいと考えられる。 本研究では、歩行動画から人工知能を利用したマーカレスモーションキャプチャにより、トレッドミルと平地での歩容の比較および類似性に影響を与える身体機能を探索的に調査することを目的に実施した。 44名の患者が研究に参加した。トレッドミルでの歩行速度の規定は、平地歩行の0.5倍の速度から0.1倍ずつ大きくして、1.0倍までの6段階実施した。トレッドミルでの歩行データは、6種類のうち患者が快適だと感じた快適速度1種類と、1.0倍の速度の合計2種類を使用した。計測データから、ほぼすべての対象者においてトレッドミルと平地歩行を同じ速度で実施すると、トレッドミル歩行において、歩幅が短く、ケイデンスが大きくなっており、股関節最大屈曲角度や伸展角度減少などの特徴も見られた。くわえて、対象者は平地歩行の0.8倍程度での速度でのトレッドミル歩行が、歩きやすいと感じることが多かった。快適だと感じた速度でのトレッドミル歩行は、ケイデンスが平地歩行速度と同程度であった。 各評価項目(歩幅、ケイデンスなど)のトレッドミル歩行(快適速度、1.0倍速度の2種類)に対する平地歩行の比(1倍に近いほど類似している)と、身体機能(10m歩行速度、筋力、バランス機能など)とのPearsonの相関係数を用いての関連検討では、統計的に有意な関連は見られなかった。
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