研究課題/領域番号 |
20K19338
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三浦 平寛 東北大学, 大学病院, 助教 (30845805)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メトホルミン / 多発性肝嚢胞 / 多発性嚢胞腎 / AMK活性化プロテインキナーゼ / 運動療法 |
研究実績の概要 |
常染色体優性多発性嚢胞腎は、腎嚢胞の増大・増加とともに進行性に腎機能が低下し、末期腎不全の至る疾患であり、肝嚢胞を合併する。有効な治療法は、V2受容体拮抗薬トルバプタンのみであるが、高価な上に尿量が多量となるため、QOLを低下させ、治療脱落率も高く、肝嚢胞には効果がない。我々はこれまで腎疾患モデルラットにおいて運動による臓器障害進展抑制効果、その機序に関する研究を行ってきたものの、多発性嚢胞腎について検討していない。多発性嚢胞腎モデルラットを用いて腎・肝嚢胞増大や腎不全進行への長期的運動の効果を検討し、腎・肝嚢胞への運動療法の有効性・安全性を検証することを本研究の目的とした。さらに長期的運動の腎・肝保護効果の機序を解明すると共に、その効果を高めることが可能な併用薬剤についても検討を行うこととした。 我々は先行研究において、多発性嚢胞腎ならびに肝嚢胞モデルであるPCKラットへの長期的運動がAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化し、肝嚢胞形成と線維化を改善したことを報告した。そこで、PCKラットにAMPK活性化因子である糖尿病治療薬メトホルミンが、腎・肝嚢胞形成ならびに線維化に有効であると仮説を立て検討を行った。メトホルミンは、肝臓のAMPKのリン酸化を増加させ、細胞増殖マーカーや線維化マーカーを減少し、肝嚢胞形成と線維化の進行を抑制した。しかしながら、腎嚢胞形成と線維化への有効性は得られなかった。この研究結果より、長期的運動の腎・肝嚢胞抑制効果の機序において、肝嚢胞ではAMPKの活性化が関与していることと、腎と肝とで嚢胞抑制の機序が異なっている可能性が示唆された。 今後は、長期的運動とメトホルミンの相乗効果の検討、長期的運動の腎嚢胞抑制効果への関与が予想される因子の検索、その因子に影響を与える薬剤投与による嚢胞抑制効果の検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、令和2年度は、長期的運動の効果の検討(長期的運動による腎・ 肝嚢胞抑制、腎・肝線維化の抑制、腎糸球体硬化の抑制、運動耐容能らの評価)を行う予定であったが、すでに検討を終え、長期的運動は腎・肝嚢胞抑制に有効との結果を得ている。令和3年度は長期的運動の腎・肝嚢胞抑制効果のメカニズムの解明を行う予定であったので、令和2年度中に肝臓についてメカニズムの研究成果が得られたことを考えると、当初の予定より進捗は速いと自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、肝嚢胞抑制効果のあった長期的運動とメトホルミンの相乗効果の検討、長期的運動の腎嚢胞抑制効果への関与が予想される因子の検索、その因子に影響を与える薬剤投与による嚢胞抑制効果の検討を、腎・肝機能評価、組織学的評価、蛋白質解析などを用いて行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験器具または実験消耗品を購入するには、少額過ぎたため、翌年度分の助成金とあわせて実験消耗品を購入し、物品費として請求する予定である。
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