ウェイテッドブランケット(Weighted Blanket,以下,WB)は,寝具の中に鉄製の鎖やプラスチックボールを入れて重力による圧刺激を与え,精神的な落ち着きや安眠をもたらす掛布団である.2000年頃よりリハビリテーションの支援用具として広く普及しはじめた.我々は,臨床にてWBの効果を検証する中で,,WBによる圧刺激が心理的な効果だけでなく,筋緊張の緩和といった身体的な変化を及ぼす可能性を考えた.また一方で,ひざ掛けタイプのWBは,ふとんタイプのWBと比較し,臨床場面においてその効果は確認されているものの大規模な検証に関する報告はなく,対象者の特性や効果的な使用場面等について明らかでない.そこで本研究は,今回の実験をパイロットスタディとして位置づけた.想定使用者による事例でWB介入による効果や臨床現場での使用の可能性を検証し,今後実施予定の大規模実証の実現可能性の検討を目的とした.高齢障害者の入院・入所施設での検証において,日中のベッド臥床時に,特に緊張の高い左上肢(肘関節)にWBをかけ,導入直後の即時的な変化をWB介入前後で比較した.結果,WBあり時には,WBをかけると筋電位が発生し,2-3分の間に減少した.筋電位の減少後に,関節可動域が緩やかに拡大している傾向が見られ,筋緊張の亢進を示す重度の認知症者に効果がある可能性が示された.本研究の結果より,筋緊張の亢進した認知症者への,使用場面や方法,その効果が明らかになった.しかし,現段階では事例検証に過ぎないため,今後症例数を増やして検証していく必要性がある.本研究の成果は,想定使用者やその家族,WBの適切な普及を目指す者等へ広く周知するべく,「重たいブランケット」のホームページを作成し,使用者やその家族,専門職などへ周知し,本当に必要としている使用者が適切なWBを使ってもらうことにつなげていく.
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