研究課題/領域番号 |
20K19346
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研究機関 | 山形県立保健医療大学 |
研究代表者 |
鈴木 栄三郎 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 助教 (20823298)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 運動観察 / Mirror neuron system / 経頭蓋直流電気刺激 / Motor resonance |
研究実績の概要 |
本研究は、他者の運動を観察する運動観察とその神経基盤の一つとされるミラーニューロンシステム(Mirror neuron system:MNS)への経頭蓋直流電気刺激(Transcrania direct current stimulation:tDCS)の併用による脳卒中後の上肢機能回復の促進効果とその効果機序を明らかにすることを目的としている。 今年度は、MNSのバイオマーカーとされる運動共鳴(Motor resonance:MR)を安定して計測するシステムを構築するための予備実験を実施した。MRは、他者の運動の観察によって、一次運動野への単発の経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation)により手内筋に誘発される運動誘発電位の振幅が増幅する現象であり、この振幅の変化率がMNSの活動量を間接的に反映すると考えられている。しかしながら、MRの計測方法は、先行研究でも確立されたものはなく、本実験環境においてもデータの再現性に課題があった。よって、視覚刺激(対照刺激含む)の種類や呈示方法(時間、回数)、さらにはTMSのタイミングや刺激強度などのパラメーター設定を検討し、安定した反応を取得する方法を確立した。MRの安定した計測法の確立により、今後、運動観察とMNSへのtDCSの併用による効果の機序を明らかにすることが可能となると考えている。 その他には、現在、健常成人を対象に、運動観察介入における観察時間(1分、2分、3分、対照刺激2分)の違いによるMRの変化を検証している。各条件3~5名のデータによれば、運動の観察時間の違いによるMRの変化の差異はみられていない。今後さらなるデータの蓄積が必要ではあるが、これらの結果は運動観察のみではMNSの可塑的な変化はみられず、tDCSとの併用による効果の検証の必要性を示唆するものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度に引き続き、COVID-19感染症対策による制限や他の業務による時間的制約により一時的なエフォートの低下をきたした。 また、計画していた評価項目の電気生理学的指標の一つであるMotor resonance(MR)の計測において、そのデータの再現性に課題がみられた。そのため、計測環境、計測課題設定、磁気刺激設定を再度見直すための予備実験の追加が必要となり、その検証に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度から現在に至るまで、COVID-19感染症対策上の制限やMotor resonance(MR)の再現性の問題といった想定外の追加実験等により、当初の研究計画から大幅な遅れが生じている。 今後は、計測環境や計測条件は概ね整ったため、感染状況等に留意しながら、先ずは当初の予定通りに健常成人を対象とした基礎研究を早期に進める。 また、病院レベルの感染対策上の制約や時間的な制限等により、患者を対象とした臨床研究の実施までには至らないことも想定される。状況によっては、健常者を対象とした基礎研究内容の強化に計画を変更し、tDCSの刺激条件の追加やtDCS後および刺激中のMRの経時的変化の追加検証を行うなどして運動観察とMNSへのtDCSの併用による効果機序の基礎的な知見を積み重ねていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染症対策上の制約と想定外の予備実験の追加による研究計画全体の大幅な遅れにより、患者を対象とした臨床研究の実施には至らず、当初購入を予定していた患者の運動パフォーマンスの評価機器の購入を見送った。その他、感染対策による移動制限により学会出張費(旅費)も生じなかった。以上の理由により次年度使用額が生じた。 今後は健常者を対象とした基礎研究をより重点化し、健常者の手の運動パフォーマンスをより詳細かつ定量的に評価する機器の購入や追加実験のための人件費の使用を予定している。
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