研究課題
前年度の検討で、HMGB1の抑制ががんに対する温熱療法において標的となっており、その分泌抑制ががん性サルコペニアの抑制につながっていることが明らかになった。本年度は、HMGB1分泌を抑制する目的で抗酸化作用を有するビタミンのがん性悪液質に対する効果を検討した。われわれは、抗酸化作用の知られるビタミンB2(VB2)とビタミンE(VE)のがん性サルコペニアに対する作用を、マウス悪液質モデルを用いて検討した。マウス大腸癌細胞CT26をVB2・VEで処理すると、エネルギー産生・酸化ストレスはVB2では増加しVEでは低下した。増殖は両者とも抑制したが幹細胞性は亢進した。一方、マウス筋芽細胞C2C12を処理すると、エネルギー産生・酸化ストレスはVB2では軽度増加しVEでは軽度低下した。増殖および筋分化・成熟度は両者ともに低下した。マウス悪液質モデルでは、腫瘍増殖は両者ともに抑制されたが、筋萎縮・成熟度の低下は両者ともに増悪した。また、血中HMGB1レベルも低下しなかった。このように、VB2・VEは、抗腫瘍効果は示したものの、筋萎縮抑制効果は確認できなかった。この背景には、VB2・VEによる抗腫瘍効果による腫瘍細胞壊死によりHMGB1が死細胞から放出され、それがサルコペニアを促進することになったと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
前年度の研究の結果、温熱療法がHMGB1を抑制することがサルコペニア抑制につながることが明らかになり、本年度は抗酸化作用を有するビタミンによるHMGB1分泌抑制作用を検討した。
今後は、HMGB1抑制作用の報告があるグリチルリチンなどを用いて、がん性サルコペニアに対する効果を検討する。
グリチルリチンを用いた動物実験を行う費用を次年度使用額としている。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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