研究課題
脳卒中患者に歩行再建に対する、効果的な歩行ニューロリハビリテーションは未確立である。その原因は、脳卒中患者の歩行における異常な下肢運動パターンの神経メカニズムが未解明であることや、歩行再建の治療指標となる神経学的なバイオマーカーが存在しないことにある。本研究は、歩行中の脊髄神経経路の働きに着目し、脳卒中患者の歩行の異常パターンの脊髄における神経メカニズムを解明し、脊髄神経学的なバイオマーカーを確立することを目的に開始し、研究を継続している。2021年度は、開発した歩行中の脊髄相反性抑制評価システムを用いて、健常者における基礎データの取得、および脳卒中患者でのデータ計測を前年度より継続して実施した。歩行中の脊髄相反性抑制の電気生理学的評価として、ヒラメ筋H反射を用いた条件-試験刺激法を用い、前脛骨筋からヒラメ筋に対するIa相反性抑制を評価した。歩行周期を8個のbinに分割し、任意のbinに対して試験刺激と条件刺激を実施した。試験刺激は、脛骨神経に対し、そのbinにおける最大M波の4-9%の振幅でヒラメ筋M波が誘発される強度で実施した。条件刺激は、総腓骨神経に対し、前脛骨筋のM波閾値で実施した。各binにおいて、試験刺激のみのH波、および条件刺激を加えたH波は、30発ずつ記録し、peak to peakの振幅値から相反性抑制を算出した。脳卒中患者では、前年度からの継続で、5名のデータを追加収集した。立位での測定では脊髄相反性抑制が健常者と同程度に機能しているにも関わらず、歩行中には脊髄相反性抑制が脱抑制となる患者が存在することが明らかになった。また、健常者での基礎データ収集も継続し、現在4名のデータを追加収集した。まだ少数例での結果であるため、次年度も継続してデータ収集を行っていく。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、データ収集の進捗にやや遅れがある。
歩行中の脊髄神経経路評価システムの開発は完了しているが、データ取り込みおよびリアルタイムデータ解析プログラムのアップデートを行い、さらなる実験の効率化を進めている。これにより、実験の所要時間が減少することでデータ収集がさらに進む予定である。
現在も継続してデータ収集を行っていることと、歩行中の脊髄相反性抑制評価システムのアップデートを行っているため、実験で使用する消耗品費、およびアップデートに必要な計測機器の周辺機材・消耗品に使用する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Clinical Neurophysiology
巻: 138 ページ: 74-83
10.1016/j.clinph.2022.02.025