研究課題/領域番号 |
20K19353
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
磯 直樹 東京家政大学, 健康科学部, 准教授 (70781649)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NIRS / tACS |
研究実績の概要 |
tACSにに伴う脳血流動態の反応については十分に明らかになっていない.課題を進めるにあたり,大前提となるtACSによる酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)がどう変化するかを先ずは明らかにすることを目的として研究を実施した. 対象は書面にて参加の同意が得られた健常成人15名とした.全ての対象者に対して,tACSを行う介入条件と疑似刺激を行う対照条件を1日以上の間隔を空けて実施した.介入条件では,国際10-20法のC3とCP1にtACSの電極を設置し,5分間の安静の後に0.3 mAの強度および20 Hzの周波数で20分間の刺激を行った.また,tACS中に20チャネルのNIRS装置によりC3を含む運動関連領野のoxy-Hbを計測した.対照条件では,対象者にtACS開始のクリック音のみ提示し,tACSを行わなかった.計測したoxy-Hbのデータは,0.005から0.5 Hzの帯域通過の後に独立成分分析を行い,C3のチャネルに特異的な変化を抽出した.次に,介入条件と対照条件におけるoxy-Hbを正規化し,対応のあるt検定を用いて比較した. 結果としては,介入条件および対照条件における正規化oxy-Hbの平均 ± 標準誤差は,それぞれ-1.05 ± 0.02と-7.01 ± 9.00だった.介入群においてやや高値だったものの,有意差を認めなかった.しかし,対照条件では介入条件と比較してばらつきが著しく大きかった. tACS中の脳血流動態を調べた研究では,刺激に伴ってoxy-Hbが低下することが報告されている.本研究において,tACS中のoxy-Hbが少ない変動で一定に保たれていた原因として,oxy-Hbを一定に保つための大脳血管反応を介したホメオスタシス現象が関与していた可能性がある.今年度の実験結果が本研究課題の基礎となり,今後はoxy-Hbの時系列的変化様式を特定し,tACSによる脳血流動態変化をを明らかにし、運動イメージを用いた課題に対するtACSの影響をNIRSで計測された脳血流動態を指標に検証できるよう進めていきたいと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は運動イメージ課題も含めた研究課題と直結する段階までの実験を行う予定であったが,新型コロナウイルスの影響もあり,実験の実施自体が難しい時期があった.そのため,今回の課題の基礎となるtACS中の脳血流動態変化についてのみ実験するに留まった.全く実験ができない状況は避けられたが,今年度実施できなかった分を次年度で円滑に実施していき,計画的に進めていくよう準備していきたい.
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今後の研究の推進方策 |
今年度,新型コロナウイルスが感染拡大をする中,研究協力機関とも連携し,感染予防に努めながら実験を実施することができた.また,感染予防を含めた計測機器の講習会にも参加し,実験に関する技術の向上を図った.今年度,一部ではあるが実験を実施してきたノウハウを活かし,次年度は新型コロナウイルスの感染予防に努めながら,実験を円滑に実施し,計画的に研究課題に取り組んでいきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は予定していた実験まで実施することが出来なかった.そのため,データ解析や論文作成までには至らなかった.次年度は,今年度実施できなかった部分の実験を合わせて行っていき,論文投稿してきたい.また,次年度からは今年度の実験結果を踏まえた方法で行う予定であり,運動イメージ中の筋活動のモニタリングなど,実験の際の備品及び消耗費についても併せて使用していく予定である.
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