1)遠隔嚥下検査(remote examination of deglutition: RED)の信頼性、妥当性検証、遠隔評価の満足度調査:口腔癌術後患者72名、健常高齢者21名にREDを実施した。対面での信頼性と妥当性、対面条件と遠隔条件の一致度は高かった。遠隔での評価者間信頼性は「軟口蓋の挙上」がやや低値であったため、総点の計算から除外した。REDのカットオフポイントは、嚥下障害が8点以下(感度0.74、特異度0.67)、誤嚥が3点以下(感度0.80、特異度0.98)となった。満足度調査では、遠隔検査に対する恐怖心は5%、緊張感は35%、答えやすさは95%の対象者が「非常にそう思う」か「ややそう思う」と回答した。対象者の緊張感に留意する必要性はあるが、REDの遠隔実施に関して高い受容性があることが示された。 2)在宅と病院を繋いでREDを行う実証実験:在宅(東京)と病院(福岡)をWeb会議システムで接続し評価を行った。全例にREDの検査遂行が遠隔で可能であった。対面と遠隔条件の一致度は高かったものの、在宅では「機器類を置く場所がない」、「通信環境が不安定」といった制約もあった。 3)遠隔での“セルフトレーニングの促進的介入”:遠隔での介入を行わない段階(A)と遠隔で“セルフトレーニングの促進的介入”を行う段階(B)を設定し、単一事例研究によるABAB法を行った。自宅でプリントに従ってセルフトレーニングを行った回数を記録してもらい、その遵守率を比較した。遵守率は、順にA 74.1%、B 81.5%、A’77.8%、B’83.3%であり、遠隔での促進的介入が有効であった。 4)遠隔での間接訓練:前舌保持嚥下法(THS)の訓練を初回は対面、2回目以降は遠隔で実施した。THS時の挺舌距離の調整、セルフトレーニングの確認が遠隔で全例可能であった。効果については未発表のため記載せず。
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