研究課題
変形性膝関節症に対する運動療法は、非ステロイド性抗炎症薬や軟骨保護に作用するヒアルロン酸といった薬物と同じく高い鎮痛効果を発揮する一方で安全で安価であり、治療の第一選択となる。しかしながら、運動による変形性膝関節症の疼痛緩和効果の分子機序は未解明であり、病態そのものを修飾するのか、あるいは病態修飾以外の機序による鎮痛によるものかも明らかではない。変形性膝関節症に対する代表的・典型的な運動療法である大腿四頭筋等尺性収縮訓練では、筋力増強に伴う膝関節の安定化という生体力学的環境の改善によって膝への負担が減り、痛みが軽減することが想定されてきた。しかし、大腿四頭筋等尺性収縮訓練による変形性膝関節症の疼痛軽減は筋力増大を介さないという報告があり、その効果は筋力増強だけでは説明できず、訓練または運動の動作そのものに意味があることが示唆される。本研究では、大腿四頭筋等尺性収縮訓練時には組織・細胞には物理的力刺激が加わることに着目し、変形性膝関節症に対する運動効果の背景にある分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度は、昨年度に引き続き、作製した大腿四頭筋等尺性収縮訓練時に膝関節に加わる物理的刺激を再現する局所的物理的刺激機器により負荷される関節内圧の測定に試みた。しかし、既存の圧センサーでは、マウス膝関節内への導入が困難であり、膝関節内圧の測定法を確立することができなかった。そこで、研究期間内の成果を最大限とするために、運動療法効果をメカニカルストレスで再現する研究の一環として、変形性膝関節症のリスクファクターのひとつである高血圧症に対する、頭部へのメカニカルストレスによる高血圧改善効果の分子メカニズムの解明に取り組んだ。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
J Vis Exp
巻: 181 ページ: e63100
10.3791/63100