研究課題/領域番号 |
20K19368
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構村山医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
吉沢 雅史 独立行政法人国立病院機構村山医療センター(臨床研究部), 電気生理学研究室, 共同研究員 (40836277)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中枢性血圧調節 / グリア細胞 |
研究実績の概要 |
リハビリテーションにおける運動療法の際など、運動時時における血圧調節神経機構にグリア細胞とニューロンとが相互に興奮性に関連し、交感神経を介して中枢性に血圧上昇を惹起するという仮説の証明のため、まずはマイクログリアと交感神経の関係についての実験的検討を行った。Wistar rat (N=14)に血圧測定用のテレメーター(Kaha Science社製)の植え込みを行い無麻酔・非拘束下での血圧・脈拍数の測定を可能とした。その後。交感神経を興奮させるために、Air jet stress(10 L/min, 15min)の負荷を行い血圧・脈拍数の応答を解析した。マイクログリアと交感神経興奮の関与を調べるため、マイクログリアを選択的に抑制することが知られているMinocyclineの前投与を行い、投与の前後での血圧・脈拍数の変化からマイクログリアと交感神経の関連を検討した。その結果、stress下においては血圧・脈拍数の上昇率はMinocycline投与により抑制され、脈拍数はその後の上昇率の持続も抑制することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず交感神経興奮とグリア細胞、ニューロンとの関連を調べる目的にこれまで我々の実験系で使用していた、Air jet stressを用いた。負荷の様式は異なるものの、Air jet stressにおいても交感神経活動の増強は知られており、血圧・脈拍数の上昇率はマイクログリアの選択的活性化阻害薬であるMinocycline前投与により抑制されることが判明した。2020年度当初の予定であった運動負荷に伴う血圧の上昇の測定の前段階の実験として有意義なデータが得られたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は2020年度に行ったAir jet stressによる血圧・脈拍数の上昇とMinocycline投与による上昇率の抑制が真にマイクログリア活性の抑制により生じているかを調べるため、組織学的な検討を行う。より長時間のAir jet stress (5-6時間)を行ったのち、負荷終了30分後に過剰量のイソフルラン吸入によりラットを安楽死させ、その後直ちにパラフォルムアルデヒド液による全身灌流固定を行う。視床下部から延髄までを摘出し、交感神経中枢である視床下部室傍核、背内側視床下部(DMH)、延髄腹外側野(RVLM)の組織標本を作成し、ニューロンの活性を示すc-fosの発現やアストロサイトの活性化を反映するGFAPの発現増強、マイクログリアの活性化を示すIBa1の発現増強およびマイクログリアのアメーバ型への形態変化の有無・程度についての観察を行う。これをグリア細胞の活性化薬の前投与を行った群と行わなかった群とで行う。また、2020年度に予定していた、トレッドミル運動負荷による血圧・脈拍数の上昇とマイクログリアの関連を調べるためのデータの集積を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本実験のために必要な器具は施設内にそろっていた。今年度は血圧測定用の送信機の故障に伴う追加購入などを検討していたが、故障が少なく購入数を少なくすることができたことや、当初予定していた自然発生高血圧ラットではなく、Wistarラットを使用したため次年度使用額が発生した。 発生した金額は組織学的実験のための試薬の購入や、血圧測定用の送信機の購入、またWistarラットのみだけでなく、自然発生高血圧ラットなど多種のラットに交感神経活動とグリア細胞の関連を調べるための購入費用として計上する。
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