研究実績の概要 |
運動中に血圧が上昇する神経メカニズムの詳細は不明であり、その解明はリハビリテーションにおいて円滑な運動療法を行う方策を確立するために必要と言える。本研究では、リハビリテーションにおいて問題となりうる運動中の血圧上昇の機序についてさらにマイクログリアの役割を明らかにすることを目的とした。 運動中の血圧上昇の機序についての基礎的検討として、低酸素負荷に対する血圧上昇応答におけるマイクログリアの関与を検討した。無麻酔非拘束の成熟オスラットを対象とし、急性低酸素(FiO2 13%, 7%)負荷により惹起される交感神経興奮による血圧の変化をラットの体内に埋め込んだ血圧測定テレメトリーシステムにより、換気パラメータ(呼吸数、1回換気量、分時換気量)の変化をホールボディプレチスモグラフィー法により測定した。さらにそれらの変化が、マイクログリアの活性化を抑制するMinocyclineの前投与の有無によりどのように影響を受けるかを解析した。低酸素負荷前の安静ベースラインの条件下ではMinocycline前投与の前に比しMinocycline前投与の後での血圧は有意に高く、マイクログリアは低酸素負荷のない安静ベースライン条件下では普段の血圧を抑えているものと考えられた。Minocycline前投与は、低酸素負荷に対する血圧上昇応答には影響を及ぼさなかったが、低酸素換気増強応答を減弱させた。このことより、マイクログリアは中枢性血圧調節機構と中枢性呼吸調節機構とに対し異なる様式、異なる方向性の修飾を行っているものと考えられた(Yoshizawa M, Okada T et al. J Physiol Sci. 2022)。これらの結果からは、運動に伴う血圧上昇にマイクログリアが積極的に関わっているという示唆はえられなかった。
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