研究課題/領域番号 |
20K19371
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷川 直哉 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (90824665)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / すくみ足 / 感覚フィードバック / 運動学習 / 姿勢制御 / 視覚フィードバック / 聴覚フィードバック / バランス練習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,パーキンソン病患者の主要症状であるすくみ足や姿勢制御障害の改善を目的として,運動学習に着目した新たな感覚フィードバック練習を考案することだった。練習考案の前段階として,バランス練習や認知負荷トレーニングを組み合わせたMultiple trainingが在宅パーキンソン病患者の姿勢制御能力に与える影響を比較検討した。その結果,練習前後で歩行速度や歩行時の上肢の振りおよび体幹の動き,最初の1歩目の推進力に改善が認められる一方で,静止立位でのバランス能力や外乱に対する反応に有意な改善が認められなかった。一方で,すくみ足の主観的な評価法であるNFOGQには改善が認められた。したがって,バランス練習や認知負荷トレーニングはパーキンソン病患者の姿勢制御能力向上に有効だが,より各々の姿勢制御能力に特異的な練習の必要性が示唆された。本研究の成果は,npj Parkinsons Dis,Front Neurolに掲載された。 さらに,健常若年者を対象とした動的姿勢制御の練習において,感覚量を一致させた断続的な視覚と聴覚のフィードバック練習を用いた場合の学習効果を比較検討した。その結果,感覚フィードバックを除いた学習効果において,時間的側面および空間的側面ともに聴覚フィードバック練習群で学習効果が認められた。一方で,視覚フィードバック練習群では時間的側面位学習効果が認められなかった。したがって,断続的な聴覚フィードバックを用いた動的バランス練習は学習効果を強める有効な方法であることが示唆された。本研究成果は,PLoS Oneに掲載された。 また,パーキンソン病患者において認知課題を付加した二重課題を評価することの重要性を示唆する研究成果が,J Parkinsons Disに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度に,パーキンソン病患者様を対象に感覚フィードバックを用いた姿勢バランス練習の学習効果を比較検討する計画であったが,新型コロナウィルス感染症の流行に伴い,患者データの収集が困難となった。一方で,パーキンソン病患者様に適用する予定の感覚フィードバック練習の効果を健常若年者において確認することができ,成果の一部は学会報告や論文投稿にて公表することができた。以上の点から,研究計画はやや遅れているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から,すくみ足や各々の姿勢制御能力に有効な練習方法は明らかにできていない。すくみ足と関連性のある姿勢制御能力を明らかにするとともに,有効と考えられる練習方法の効果を比較検証する予定である。また,新型コロナウィルス感染症の流行に伴い,主な研究拠点である大学構内でのデータ収集が困難となっているため,入院患者様を中心に病院などの医療施設でのデータ取集を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属変更に伴う研究機器の運搬および国際学会参加に伴う参加費や旅費等を予算していたが,新型コロナウィルス感染症の流行に伴い,学会が全てオンライン開催となり使用する必要がなくなったため次年度使用額が生じた。残額を含めた次年度予算は,研究計画に沿った消耗品の購入や学会参加のための旅費に充てる。その他,新型コロナウィルス感染症の流行による研究計画の変更に伴う設備投資に使用する。具体的には,各医療施設に持ち運び可能なデータ収集機器およびデータ収集に使用するラップトップ等の購入に充てる。
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